午後ローぴょんぴょん待ち

関東テキヤ一家の午後ローぴょんぴょん待ちのレビュー・感想・評価

関東テキヤ一家(1969年製作の映画)
4.0
 主人公の菅原文太、その幼馴染だが今は敵対関係にある組に忠義立てしている寺島達夫、主人公の女を寝取るが彼に仁義(ドスを抜かないという親父との誓い)を守らせる為に討ち死にした待田京介の三人を軸に展開する任侠映画で、『仁義なき戦い』ほどではないが人間関係がやや錯綜しており主人公が絶対的なヒーローではないのが特徴。
 寺島達夫は菅原文太との幼馴染の間柄より組への仁義を取り、待田京介は許嫁となった女よりも組と菅原文太へ忠義立てすることを選んだ。そして菅原文太も最終的には親父との誓いを破りドスを抜いて殴り込みを決行した。完全な仁義というものは誰の中にもない。だからこそ寺島と待田の場合には、滴る血に染められる妻子の写真や散らばるパチンコ玉が際立たせる死の虚しさが演出の要になっている。
 それは菅原文太の場合でも同様であり、雨と血がぐちゃぐちゃに混ざり合う殴り込みシーンの最後のカットは、親父の言いつけを破って抜いたドスを映し続けて終わっている。
 紛れもなく任侠映画の名作である。