わたP

ばかのハコ船のわたPのレビュー・感想・評価

ばかのハコ船(2002年製作の映画)
5.0
山下ファンだとのたまっていましたが、これを未見だったのが恥ずかしいほど山下さんらしい映画だった。

あかじる という健康食品で一発当てようと思っている、ものすごく幼稚な考えのダメ男の主人公と、そんなダメ男に着いていく不憫な彼女の物語。
主人公は山下映画史上最もダメなんじゃないかと思うくらいのやつで、あかじるを売る戦略もただただ幼稚なくせに、「今までの販売方針は」とか「田舎の土地柄が」とか中途半端に難しい言葉を使おうとするからイタすぎる。当然それを話した相手にはことごとくダメ出しをさせるのだけど、すねたり彼女に当たったりして最悪。
とにかく彼女には偉そうで、彼女に当たることによって自分の自尊心を傷つけないようにしてるんだけど、それも簡単に論破されてしまう。

お父さんに紹介してもらった仕事も、わがままで断ってそのまま家出。そこから淡い思い出にすがるように元カノの元に行くのだけど、(この元カノというのが今は風俗嬢をやっていてその店に行くというのがまた痛々しいし、見ていられないプレイ前のシーン)今度は元カノの妹、しかも妊娠中とやっちゃって、と、最低。

それでも彼女はそんなことを振り払おうとするかのようにあかじる売りを頑張ろうとするのだけど、よく考えたら主人公は、あかじるにそこまで愛着も情熱も無かった。とほんとに最後まで最低。
苦役列車の貫太には文学があったし、味園ユニバースのポチ男には歌があったし、松ヶ根乱射事件の光には自分で打開しようとした一欠片の勇気があったし、たま子はかわいいけど、この映画の主人公にはそういうものすらない。本当に何も持ってなくて、どうしようもない男になんでこんなに彼女は付いてくるのだろうと不思議になる。彼女もまたばかということ。

彼女が心が折れて泣き出すシーンは「いや、むしろ今までよく堪えたよ!!」と褒めたくなった。
彼女はけして美人とまではいかないけど、笑ったりするとめちゃくちゃ可愛くて、この辺の絶妙さがほんと素晴らしい。

物語的には最後までダメな人々の救いのない話だけど、センスとしか言い様のないシーンが多くて、一回電気消して2人で寝ようとして、暗転のままベースの話になって、もう一回電気つけてベースちょっと弾いたらすぐカット切って一瞬のSEXシーンになるとことか、もうほんと爆笑しちゃった。あそこでの彼女の色気のない喘ぎ声もなんだかリアル。
それから、あかじるを飲んでるお父さんの顔を映さないでそれを見つめるお母さんを撮ったり、キャベツ蹴る主人公映さないで奥にいる彼女撮ったりもうこの辺の、センス!!!
お母さんがゴム手袋引き抜くとこだけでもうセンスよ、センス爆発しすぎでしょ。
一輪車のとこで流れる元カノの「夢レボリューション♪」みたいな曲も最高にダサすぎて最高。
妹とやったのバレた後の平静を装って牛乳飲もうとするのも最高。っていうか、そういうウケたところを説明しちゃうとほんと興醒めにしかならないから、面白いポイントって説明したらダメだと思うんですけど!
それでももう一個だけ、主人公が寝転がってジュース飲む為にペットボトルにストロー挿してるとことかそれだけでこいつのダメさがわかるわーと思った。

そして山下映画の象徴とも言える田舎描写。うちの地元もほんとこんな感じ。田んぼに軽トラにドラッグストアにあの最後のスナックが潰れたようなまだやってるようなとこがいっぱいあって、なんだか親近感が湧く。

あ、あと最後の弟役の人ってホントの山本浩司の弟かな?顔似過ぎ
わたP

わたP