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眠りの館のpikaのレビュー・感想・評価

眠りの館(1948年製作の映画)
4.0
始まって1分で惹きつけられてもう虜!
夜行寝台列車のベッドの上で目が覚めたクローデット・コルベールは窓の外を見て驚愕!「私は家のベッドにいたの!電車になんか乗ってない!」とパニックを起こす。
夢遊病か、精神病か、陰謀か、サスペンスタッチな演出にゾクゾクしまくりなんだけど、さすがサークはブレません!

他のサークのサスペンス映画同様ストーリー自体には捻りもなくよくある話になっていて、ベタだからこそ、そのシンプルなドラマをなぞっていくキャラの魅力が満遍なく映える。
活き活きとした個性や細かいディテールが楽しくて、クローデット・コルベールの愛らしさや魅力は「いいわぁ、素敵だわぁ」と声を出すほどだし、「ちょっとフランス風」にも出ていたドン・アメチーの正反対なキャラクターは大真面目なのに滑稽で面白い。

いわゆる火サスとかの2時間ドラマや昼ドラレベルのストーリーをただもんじゃない傑作に化けさせるサークの演出力と観察眼に痺れまくり。
キャラクターの人物造形、感情表現に全ての演出が終始されているもんで、ベッタクソな話なのに彼らが行動するから新鮮で、味わい深く、友人になったような親近感によって緊張感やカタルシス、興奮や感動などの喜怒哀楽が芽生えてくる。

もし、自分がこんなサスペンスに巻き込まれたら!?ヒーローたる探偵キャラの魅力に酔い、コルベールに自分を重ね、ひと時の夢を見る。
メロドラマの巨匠サークは、「観客に映画の世界を疑似体験させ、現実から解き放たれて夢を見る」という、これぞ映画たる醍醐味!みたいな存在価値を見出し、生かし、世界中の永遠の乙女達を現実のストレスから救ってきたんじゃないかと、改めて本当に凄い巨匠だなぁと感動した。
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