カウリスマキの世界にいるジャン=ピエール・レオがなんだか可笑しい。
どんな俳優も、カウリスマキの作品に出ればその世界の人になる。
長く勤めた会社から突然クビを宣告され、退職金がわりにもらったのは壊れた腕時計ひとつ。
絶望した男は殺し屋に自分を殺害するよう依頼する…という、笑っていいのかどうなんだかわからないこの絶妙なバランスが好き。
殺し屋を演じたケネス・コリーの哀愁あふれる佇まいの良さ。
彼も彼で家族がいたり実は病を患っていたりと、殺し屋側の事情にも触れるところが本作を味わい深くしています。
登場人物ずっと真顔だし、悲惨なことばかり起こるのに、最後に受け取るのは一輪の花のような小さくもあたたかい人生賛歌。
カウリスマキの、特にある時期からの作品はどれもそんな感じで、好きになってしまいます。