TAK44マグナム

戦慄!呪われた夜のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

戦慄!呪われた夜(1982年製作の映画)
4.0
セミ人間はオッパイがお好き。


1965年のミシシッピー州。
田舎町のはずれを新婚旅行でドライブしていたイーライとキャロライン。
車が脱輪してしまったのでイーライはガソリンスタンドに助けを求めに行きますが、その隙にキャロラインが異形の者にレイプされてしまいます。
その時にできたマイケルをイーライも愛情を注いで育て、あの夜に起こったことは忘れたはずでした。
しかしマイケルが17歳になると謎の病を発病し、それが遺伝性のものだとわかります。
夫妻は息子の病気を治すため、否が応でも消した記憶を紐解く必要に駆られ、再び忌まわしき土地を訪れることを決意。
早速、事件のことを調べ始めますが誰も彼もが知らぬ存ぜぬばかり。
みんな何かを隠しているのか?

少し遅れて、絶不調ながらも一人で後を追うように町にやってきたのはマイケルでした。
何かにせかされるように、見知らぬ土地へと足を踏み入れるマイケル。ついでにナンパにも精をだすマイケル。
どうしてだか、体調が良くなってきたような?
一体、この土地になにがあるというのか?
やがて、マイケルは自分の中にもう一人、自分とは違う存在を感じ始めます。
そうこうしているうちに性格が豹変したマイケルは、ある一族の者を襲い、むごたらしく殺害してしまうのでした。
凄惨な連続殺人が町を震え上がらせます。
何故、マイケルは殺人を犯すのか?
彼の中にいる別の者とは誰なのか?
その裏には17年前に起きた、ある悲劇が隠されていたのですが・・・


特殊メイクをはじめとするSFXの技術向上は、「人間を他の何かに変える」、つまり変身人間が登場する怪奇映画の隆盛を招きました。
古くはハマープロなどの狼男がその代表でありましたが、着ぐるみやマスクでは表現が難しいリアルな質感や骨や筋肉の変形が再現できるようになったのです。
狼男は「狼男アメリカン」等でリファインされ、往年の名物モンスターであったハエ男も「ザ・フライ」での革命的な変身シーンが話題を呼びました。
他にも人間が異星人になってしまう「エクストロ」や、正体不明のグロい生命体に変形する「遊星からの物体X」でSFXは頂点を極め、普通のヘビになってマングースに殺られる「怪奇!吸血人間スネーク」(←これは違うか)などなど、「人間がキモいクリーチャーになるところが見どころな映画」が量産されたのでした。

そんなご時世に颯爽と登場したのが、セミ人間が田舎町で凶行におよぶ「戦慄!呪われた夜」であります。
日本では安定の劇場未公開。
深夜にテレビ放映されたっきりで半ば忘れられていた逸品。
観れば思ったより面白いとわかるのですが、セミの化け物に襲われた新婦が産んだ息子がセミ人間となり、復讐に勤しむうちに本格的に脱皮してしまうという頭の悪いストーリーに配給会社が二の足を踏んだとしても、それは仕方ないかもしれません。
なにしろ原作小説があるにもかかわらず、トム・ホランド(後の「チャイルドプレイ」の監督)からして原作を読まずに脚本を書いているぐらいなので、色々と粗があっても致し方ない。
例えば、ある理由があってセミ人間化するようになってしまうわけですが、なんで○○を食べたらセミになるのか?
どうしてセミのくせして人間の生き血が美味しいのか?
疑問は尽きませんが、たぶん何も考えちゃいやしない(汗)
楳図かずお版ウルトラマンのバルタン星人が石油をチュウチュウと吸うのはどうして?と同じぐらいに何も考えていなのでしょう!
あえていうなら、全編がそんな「ホラーだから」っていうノリだけで突き進んでゆく。
いかにも80年代らしい作風ですな〜。

本作最大のウリは何と言ってもマイクがセミ人間化する脱皮シーンに他なりません。
異様に丁寧に、どぎつい人体の変形を魅せてくれます。
ボコボコと皮膚が上下し、舌をニュ〜と出したり、苦しそうにぺりぺりと脱皮してゆきます。
因みに撮影用の「マイクの皮」を、マイク役のポール・クレメンスの友人がハロウィン用に車に乗っけていたら警官に殺人容疑で捕まったらしいです(汗)
警官が本物と見間違えるほど、完成度が高かったという事ですね。

CGで出来ないことは何も無い現在からすると微笑ましいレベルのグロテスク感ではありますが、悪ノリしすぎきた挙句、まったくセミには見えないのが一周回って凄い!
てっきりバルタン星人みたいなのが出てくるのかと思いきや、とっちゃん坊やみたいになったので驚きましたよ!
見かけがグロいとっちゃん坊やなのに、コンクリートの壁をぶち破って相手の首をもいじゃう超怪力だったりするのもいい加減で素晴らしい!
セミになれば無双できるなんて、なんて素敵なファンタジーなんだろうか!
「ザ・フライ」でも、およそパワーなんて無さそうなハエと合体したら腕相撲が強くなる描写がありましたが、セミも力強いイメージが無いのでビックリしましたよ。
もしかしたら、アメリカとかではセミはマッチョなイメージなのかしらん?

セミって土の中で、じっと脱皮の時を待っているわけじゃないですか。
それを思春期がくる17歳までにダブらせて、脱皮したらしたでセミらしく短い一生を終えるアイデアは悪くないです。
頭は悪いけど(苦笑)

最後の最後まで、まるで救いのない話なのですが、きっちりと殺害シーンもエンタメとして見せ場にしているし、ヒロインもオッパイ見せてくれるし、エクスプロイテーション映画の模範生じゃないですかね。
変身人間ホラーとして、体裁良い良作だと思います。
80年代のなんじゃこりゃホラーがお好きな方にオススメ👍


セル・ブルーレイにて