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狂った血の女のnのレビュー・感想・評価

狂った血の女(2008年製作の映画)
3.6
これは何の話なんだ?どこが肝なんだ?と最後まで訝りながら観ていたけど、終わってから実話と知ってようやく納得した。
ルイザ・フェリーダとオズワルド・ヴァレンティ、ファシスト政権時代のイタリア映画を代表する人気スターであったという二人の、栄華と没落の悲劇を描くドラマ。少なくとも、彼らについての予備知識やある程度の思い入れがないと勘所をつかみづらいような出来ではある。背景を知った上で二度目を観たら面白いかも。

なすすべなく時局と政局に踊らされ続ける哀しき道化オズワルドを演じたルカ・ジンガレッティの表現力が圧巻。対するモニカ・ベルッチはもちろん大物の風格は申し分ないものの、その分、初心な新人から大女優への劇的な変身、そこからの退廃の日々そして破滅へ…という落差が見えづらかった。脚本のせいでもあるだろうけど、オズワルドを恋人に選んだ理由も、見ているだけではよくわからない。

主要キャラクターのうち、貴族階級出身の映画監督で後にレジスタンス闘争に身を投じたゴルフィエロ・ゴッフレーディだけは架空の人物であるという。おそらく映画界もファシスト政権におもねる者ばかりではなかったことを強調する意図があったのだろうけど、何かジョルダーナ監督らしくない改変だな…と感じたが、一方でアレッシオ・ボーニを世界一魅力的に撮る監督でもあるので、その意味では完全に本領が発揮されていた。性的指向の不一致のために恋愛関係にはなり得ない男女の、温かく細やかな心の交流…というあたりに監督のロマンチック方面のツボがあるのではなかろうかと推察する。わかる、萌えますよね。

その他のキャストでは、『輝ける青春』でマッテオの同僚で友人のルイジを演じていたパオロ・ボナンニさんが最低最悪のゲス野郎にしか見えなくてひときわ見事だった。ソニア・ベルガマスコとルイジ・ロ・カーショも少しだけ登場する。
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