ミシンそば

陽は昇るのミシンそばのレビュー・感想・評価

陽は昇る(1939年製作の映画)
3.1
直近で観た作品で、まさか「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」に割と近い展開が、こんなワンシチュエーションクラシックから摂取できるとは思わなかった。
まぁ尤も、そう言う展開が好きなわけではないんだけどね。

――アパートの最上階で男が男を射殺する。
警察に包囲され、二進も三進も行かなくなった加害者の男が、この窮状に至るまでを回想するのがこの話である。
(それはそれとして別の建物から狙撃したり、ドアを拳銃で撃ちまくったり、いくら30年代だからって警察の行動がめちゃくちゃ過ぎる)

――ごく普通の男女が、ごく普通に恋に落ちるけど結婚には至らない。
女の方は年上で話術巧みな女たらしの調教師にメロメロ。
男の方はそれに怒って調教師のアシスタントの年増女と関係を持つ…。
そこから調教師が、「実は自分はお前の彼女の父親だ」とかほざいて来たもんだから……(実際は違うみたいなことをセリフに加えて取り繕ってるけど、多分プロット段階ではマジだったんじゃないかなって邪推している。だとしたらその前後も含めて調教師の性根の悍ましさがヤバい)。

扱うもののデリケートさ(まぁ要するに不倫だったりもその中にある)ゆえに、戦時中はヴィシー政府に上映を禁止されていたがアメリカでは結構人気でH・フォンダ主演でリメイクもされている(ちなみにその映画はめっちゃコケたようである)。
詩的リアリズム作品の中でも重要な立ち位置にあるだろうとは思うけど、鑑賞後に気分晴れやかとはいかないね。
それとは対照的に、夜は明けたようだけど。