炭酸煎餅

ホラー・エクスプレス/ゾンビ特急地獄行の炭酸煎餅のレビュー・感想・評価

3.2
邦題からてっきり、列車でうぞうぞ湧いたゾンビ相手にわーきゃーなる感じのB級パニックホラーかと思ったら実はこれ結構な「勝手邦題」で、実際にはクトゥルフ系とも言える非常に真面目に作ってあるコズミックホラーでした。

日本では劇場公開はされずにビデオスルーだったらしいですが、主演がクリストファー・リー(後のサルマンでドゥークー伯爵)にドクター・ヘルシング役で知られるピーター・カッシング(後のターキン総督)、さらに「刑事コジャック」他のテリー・サヴァラスという、どこかで見た事ある役者が大集合で、そのおかげか予算は潤沢、という程では無さそうながらも芝居や絵面の安っぽさみたいなものは感じられなかったです。(もちろん1972年の作品なので時代なりのクラシック感はありますが)

物語の舞台は1906年。満州で発掘した氷漬けの原人(猿人?)のミイラが、シベリア鉄道に乗せての運搬中に蘇り、列車内で次々と人を襲い始めた。殺害された被害者を解剖すると何故か記憶や知識が全て消え去っているかのような所見が見られ……というもの。タイトルを信じて所謂"ゾンビ"を思い浮かべていると理解するのに少々手間取りますが、本作の怪物のギミックは「死体が動き出し、噛まれたりすると自分もそうなる」というような、パンデミック型の"いつものアレ"では「無い」ので、その辺りはあらかじめ知っておいたほうが混乱しにくくていいかもしれません。

最初にも書いたとおり、クトゥルフ系とも言える悪魔的・宇宙的な恐怖を描いてきちんと「ホラー」として作られている作品だと思いますので、この手のジャンルに興味のある方はご覧になられてはいかがでしょうか。
炭酸煎餅

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