猫脳髄

ホラー・エクスプレス/ゾンビ特急地獄行の猫脳髄のレビュー・感想・評価

3.6
この邦題は看板に偽りあり、である。ゾンビ「らしき」集団がクライマックスに出現しはするものの、主軸はSFホラーとサスペンス、トレイン・パニックのミクスチュアである。クリストファー・リーとピーター・カッシングのハマー・フィルム2大スターと、当時ヒール役で打ち出していたテリー・サヴァラスらが出演したイギリス・スペイン合作映画。

20世紀初頭、考古学者のリーは、満州で発掘した類人猿のミイラをシベリア鉄道で移送しようとする。ヨーロッパに向かう車内でミイラが蘇り、乗客を次つぎと殺害し、パニックが起こるなか、居合わせた医師のカッシングとリー、刑事らが協力して解決に奔走するという筋書き。

シベリア鉄道の出発駅は北京のはずが看板は「上海」になっていたり、列車の荷物係が「月桂冠」を飲んでいたりと、まあ考証はユルユルだがそれは措く。ユニークなのは、怪奇俳優コンビとミイラといういかにもな滑り出しから、予想しなかったSFに展開していく点である。さらに犯人像をめぐる密室(鉄道)ミステリ、トレイン・パニックと詰め込んで大いに盛り上がる(ただし、モンスターモノとしての恐怖感はその分減衰してしまうが)。

怪奇に見せかけたSF(またはその逆)、そしてモンスターの設定ではトビー・フーパ―「スペースバンパイア」(1985)を先取りするような作品になっている。ゾンビ作品にはあたらないが、2大怪奇スターによるレトロ・フューチャーなSF作品という珍しさだけで十分である。
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