よーすけカサブランカス

セラフィム・フォールズのよーすけカサブランカスのレビュー・感想・評価

セラフィム・フォールズ(2006年製作の映画)
4.5
復讐劇は西部劇の基本の題目だが、この作品でも中盤まではその例外ではなく妻と子を殺された恨みによって恐るべき執念と狩りの技術を以てして相手を追い詰めていく。まずその雄大な自然を舞台にしたやり取りも良かった。銃創を熱した銃口で焼いたり、割いた腹の中で暖を取ったり馬の足跡のトラッキングなど。だが彼を追う集団のなかの金だけを目当てにしていた連中が抜けて一対一になったとき様相は大きく変わる。特に牧師、泉を番人のインディアン、万能薬を売るマダムが登場する中盤。マダムが視界の一切開けた干潟で突然現れたので明らかなように、彼らはおおよそ現実の人間ではなく、神でも何でもいいが、形而上学的な存在によって彼らは復讐劇を煽り立てられる。ただそんな主の戯れに対してこれまでの長い逃避行の疲れによって彼らはとうとう許しにたどり着くのだがそれがハッピーエンドなのかどうかは、あの水も馬もない場所で散り散りになる二人を見ても分からない。
ともかく今世紀に撮られた西部劇のなかでも随一の作品だった。