YasujiOshiba

白い酋長のYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

白い酋長(1951年製作の映画)
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BD - Essential Fellini (Criterion Collection)。23-44。ニーノ・ロータ祭り。22日の土曜日にセミナーで話すために鑑賞。Van Order の Listening to Fellini を参照しながら、音楽的な観点からの見直し。 Diegetic と Non diegetic の越境、混交としての新しさの発見。ただしそれは、カートゥーンからの影響でもあり、異なるメディアのコンタミネーションってことでもあるわけよね。

ドン・ジョヴァンニの引用は忘れていた。白い酋長=ドン・ジョヴァンニの喜劇版ね。マシーナのカビリアは、とうぜんダンヌンィオ/パストローネの『カビリア』からの引用なのだろう。だから火吹きの芸人はモロク神を想起させる。いやはや。

アントニオーニの原案なのだけど忙しくて撮れない。話が回ってきたラットゥアーダが拒否、しかしフェリーニは大乗り気でピネッリの脚本を書く。その脚本はしかし、アントニオーニには気に入らなかったという話。そういう意味では、フェリーニ的な世界だったわけだけど、やはり新しいのはロータの音楽と、音響の使い方。

古典的な映画音楽は「物語世界の外から non diegetic 」サポートする。だから映像とセリフの邪魔はしない。ところがフェリーニは「物語世界の中の diegetic 」音や音楽と、「物語世界の外の non diegetic 」なものを、平気で往来し、混線させ、フィクションとノンフィクション、リアルとファンタジーを、ただ一つの映画的なものへとまとめあげてゆく。

その始まりは、映画でははっきりと確認できる。ニーノ・ロータとフェリーニの関係を特権的なものにしてゆく。この観点から、しばらくフェリーニを見直してゆこうと思っている。
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