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ソフィー・マルソーの 愛人日記のtakのレビュー・感想・評価

2.7
アンジェイ・ズラウスキー監督作は、大傑作「ポゼッション」を除いて好きじゃない。いつも誰か叫んでるし、走り回っているし、流血と汚物にまみれてる人もいるし、食べ物の扱いが汚いし…嫌いなポイントを挙げたらきりがない。その根底にはソフィー・マルソーのパートナーだったという事実に対する嫉妬があるんですけどね(笑)。本作にしても大好きなソフィー・マルソーが出演してなかったら、きっと手を出さなかったと思う。

初見は1993年2月、レンタルビデオで。今回改めて観たけれど、132分の上映時間を一気に観られず、数日かけてしまった。家事やらなんやらで邪魔が入ったのもあるけれど、から騒ぎの様子が延々と流れる前半に耐えられなかったのが最大の理由。

舞台劇調で淡々と進行する映画はいろいろある。ニキータ・ミハルコフ監督の長いタイトルのデビュー作とか。ミハルコフのあの映画は、静かな雰囲気の中に引き込まれるのだけど、この「愛人日記」に僕が感じる不快な感じはおそらく聴覚だと思うのだ。文学作品の朗読をする隣で大声で茶々を入れる輩、死が迫ったショパンが音楽への思いを語っているのを突然かき消す歌、関係を感じられないオーバーアクトな台詞。集中するポイントがわからなくなる。ショパンのピアノ曲が全編垂れ流しっぱなしで、それに劇中のショパンが弾く音が重なってしまうから、せっかくの音がグチャグチャになることも😩。

ショパンを演ずるヤヌシュ・オレイニチャクはポーランドのピアニスト。ロマン・ポランスキーの「戦場のピアニスト」で主人公の弾くピアノはこの人の演奏によるもので、指だけ出演もしている。本作では唐突にピアノに向かって弾き始める場面が幾度も出てくるけれど、全て本人の演奏。即興的に弾くちょっとした演奏が秀れたものだと誰もがわかる演出だ。

また、キャストそれぞれが自分の姿の人形を持ち劇中劇みたいに語る場面もある。浄瑠璃みたいに人形をじっくり見たかった。突然現れる赤や白の布をまとった人々。死のイメージなんでしょうか。

お話は、ショパンと愛人関係にあったフランスの作家ジョルジュ・サンド、その娘ソランジュを中心とした愛憎劇。ショパンを挟んで母と娘が対立する後半から落ち着いた結末へ。初めて観た時は予備知識皆無だったし、ソフィーしか視界に入ってこなかったから、邦題の「愛人日記」の意味が全くわからなかった。作家ジョルジュ・サンドの多くの男性関係や愛人となったショパンとの逃避行、社会主義思想などを知り、お母ちゃんの話だったのか、と今ごろになって理解するのであったw。
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