しまうま

トランスポーター3 アンリミテッドのしまうまのレビュー・感想・評価

4.2
 魅力溢れる悪役とチャーミングなヒロインの存在は、アクション映画における必須要素だとわからせてくれた。
 ジェイソン・ステイサム主演トランスポーターシリーズの完結編的立ち位置にあり、そして最高傑作だと個人的には思う。


 ジェイソン・ステイサム演じるフランクと、友人のタルコーニ警部が休暇に釣りを楽しんでいるとき、事件は起こっていた。
 海上に浮かぶ大型輸送船の中には人体や環境を汚染する大量の廃棄物が。
 その夜、フランクの元に旧知の仕事仲間が傷だらけの身体で車ごと突っ込んでくる。仲間の仕事を途中から引き受けることになったフランクは、謎多き東欧系の女性と、車からある距離を離れると爆発する腕輪とともに、ブツを届ける仕事をする羽目にーーというのが大まかな内容。


 今作のステイサムはいつも以上に身体が絞れているような気がするのは気のせいか。とにかくいつも通りスーパーマンっぷりを遺憾なく発揮してくれる。
 セガールほどではないけど、元々サイズの大きいステイサムがキレッキレな身体で飛び回るともう手に負えなくなってしまう中で、途中、セーム・シュルトとの1対1など、飽きさせない工夫を要所要所に設けてくれているのがうれしい。
 やはりアクション映画の基本である、アクション要素に手を抜かない、基本だけどとても大事なことだ。

 そして悪役であるロバート・ネッパーの熱演が素晴らしかった。
 1、2でもこのシリーズの悪役はなんとかボスたりえようと頑張ってはいたけど、やっぱりステイサムの影に隠れる印象しかない。
 『プリズン・ブレイク』の悪役っぷりが話題の彼だけど、もうさすがとしか言いようのない雰囲気を出してくれていた。ネッパーの発する言葉には重みがあり、首をひねりながら目の前の敵をなめるように見下すその視線には品のある悪役の目つきがあった。


 もうひとつ、評価したい人選として、ヒロイン役のナタリア・ルダコーワという女性がいる。彼女はたしかに他の映画に登場するような美人な女優さんとは言いがたいけど、そばかすだらけの顔はとてもチャーミングで、今作では一見気心の変わりやすい現代っ子的側面を覗かせながら、実は芯の通ったタフな女性だったという難しい役柄に見事にマッチしていた。物語が進むにつれ、彼女のことがどんどん好きになっていき、最後にはステイサムに何としても守ってほしいと思わせてくれる女性「ヒロイン」として完成されていた。

 ラストの終わり方もとってもきれいで、フランクとタルコーニ、そしてナタリアの戦いはこれで終わったんだなと納得できる着地をしてくれたことに、心の中でスタンディング・オベーションを捧げたい。
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