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新・片腕必殺剣のtakのレビュー・感想・評価

新・片腕必殺剣(1971年製作の映画)
3.7
ジミー・ウォング主演のヒット作「片腕必殺剣(原題:獨臂刀)」と同じく、隻手となった武闘家を主人公にした復讐劇。監督は正続2作品と同じく、バイオレンスの巨匠チャン・チェ。

二刀流で名を知られるようになったレイ。その活躍を妬ましく思う老練の武闘家ロンは彼を罠にはめ、得意の三節棍で二刀流を封じて勝利した。レイは右腕を切り落として武闘界から足を洗う。隻手となった彼は老人が営む食堂に雇われて仕事をしていたが、タチの悪い客にからかわれて痛めつけられる日々。彼の元に若き二刀流の使い手フォンが現れる。友情で結ばれた二人だったが、ロンが裏で関わっていた虎威山荘の悪行を止めさせようとしたことから悲劇が。

当時、看板スターだったジミー・ウォングがショーブラザースを離れて他社に移籍。その後のジミー・ウォングの活躍に対抗するために、彼の正続「獨臂刀」を超える作品を撮る意気込みで製作された作品。主演のデヴィッド・チェンとティ・ロンはその後も共演してヒット作を生み出すことになる。

ドラマ重視の1作目、異種格闘技戦のエンターテイメントの2作目。本作は全く別のストーリーなのだが、1作目さながらの悲壮感と燃えあがる復讐心。左手だけで料理や給仕をするレイが、日常で身につけた妙技の数々。これがクライマックスに活かされる展開。「修行して勝つ」は武侠映画、功夫映画の王道だが、それが生活で鍛えられた技というのが他の作品ではないだけに面白い。敵役が使うのが三節棍というセレクトがいい。三節棍誕生のエピソードが登場する「少林寺三十六房」を観ている世代は、二刀流対三節棍にちょっとワクワク。若きティ・ロンの華麗な剣さばきも見どころ。彼の最期は予想を超えた残酷描写。突然だったからびっくり。ひぃーっ😣

さて。タランティーノ監督は「キル・ビル」に数々の武侠映画から引用をしている。本作からの引用は、青葉屋での大乱闘シーンで登場。ブライド(ユマ・サーマン)がブレイクダンスのように床の上で回転しながら、襲いかかるクレイジー88の面々を斬り倒すアクション。これは「新・片腕必殺剣」では虎威山荘での戦いでティ・ロン演ずるフォンが見せる妙技。

「新片腕必殺剣」のクライマックス。レイが単身で乗り込んで戦う大殺戮は圧巻😳。ところどころの劇伴が「女王陛下の007」のサントラからの借用?と思われる。アクションの激しさとアイディア、耐える主人公が最後に怒りを爆発させるドラマは、正続とは違った魅力がある。
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