けーはち

新・片腕必殺剣のけーはちのレビュー・感想・評価

新・片腕必殺剣(1971年製作の映画)
3.9
二刀の天才剣士、秘技を持つ三節棍の達人に片腕と武術を奪われ絶望に陥るが、同じ二刀使いとの友情を得て立ち直る。その親友も、同じ宿敵に謀られ絶命。怒りに燃える隻腕剣士。自身と友の仇を討つべく二刀を超えてその先へ、唸れ、新・片腕必殺剣!──登場人物を一新、キャラクター、ドラマ、アクションともより完成度を高めたソードアクション武侠片の集大成。

元二刀流/隻腕主人公(デヴィッド・チャン)と二刀流の親友(ティ・ロン)が活躍するW主人公構成。二刀流➔片腕という転落、二年経ち斬られた腕が白骨化、服も黒くなり没落の演出が悲壮だが、そんな陰キャ主人公の前に同じく二刀を振るう明朗快活な陽キャ主人公。陰陽ブロマンス。皆そういうの好きだよね。「どこでも寝られる」と豪語する彼ら、ハンモックならぬ縄一本を木の間に張ってそこで寝たり座ったりするシーンはそのバランス感覚に感心するやら、何でそんな曲芸をやるのかと可笑しくなるやら。

宿敵の三節棍使いは若い芽を摘み自分の立場を盤石にする下劣な男だが、三節棍を中央で折り二刀を拘束するという二刀殺しな特技を使う達人。彼の武館「虎威山荘」(虎の威を借る感が凄くてこのネーミングも可笑しい)との対決姿勢が話が進むにつれて高まっていく。陽キャ主人公が誘い込まれ雑魚を悠々蹴散らすも達人同士の決闘に敗れ集団でボコられた後、四肢を吊られて胴を両断され血飛沫をあげて絶命する最期がショッキングで印象に残る。

終盤、陰キャ主人公の復活、屍山血河を築く怒涛の百人斬りと、続くラスボス戦、落ちぶれていた時代に隻腕で料理をするため空中にいろいろ放り投げて捌く器用な技を身に着けていたことが基点になって思いつく逆転の秘策、二刀で勝てぬならば三刀、隻腕ならではの発想と技を駆使して勝つ殺陣にシビれる。

男同士の熱い友情、スローで魅せるアクション、一度地に塗れた男が這い上がる筋立てなどは様々なアクション映画に引き継がれている激アツの黄金パターン。本作で一種の結実を見たと思って良い。そして現代でも目を引く数々のギミックを効かせた戦闘が光る。エポックメイキングな名作だと思う。