shibamike

ハウス・バイ・ザ・リバーのshibamikeのネタバレレビュー・内容・結末

ハウス・バイ・ザ・リバー(1950年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

一見、テンポの良い小粋なサスペンス風であったが、登場人物の性格など強引な部分も少なくなく、「何だかなぁ」という自分の中の阿藤快と「細けぇこたぁいいんだよ」という不倫ツ・ラング(私の妄想)が一騎討ちだったり、そうでなかったり。

潮の満ち引きで浮かぶゴミが行ったり来たりする川があり(海と川の境界?)、そのすぐそばにヒット作に恵まれない小説家の男が美しい妻とお屋敷に住んでいる。

このお屋敷には最近働きだした若いメイドがいるのであるが、このメイド連日連夜、男友達と夜遊びをしている「尻軽」との噂がある。鼻のツンとしたカモシカのような足を持ったチャーミングレディ。「おっちゃんとも夜遊びしようや」と酔いに任せてしなだれかかりたい。

ある日、小説家と尻軽メイドがお屋敷に二人きりになった際、普段メイドの尻なんかにねちっこい視線を送っていた小説家がメイドに肉体関係を求める(不倫ツ・ラング!)。
尻軽と思われたメイドであるが「おっさんとは無理!」とは言っていないが、とにかく全身全霊で小説家を拒絶する。が小説家の方も全身全霊で自身の性欲を満足させようとメイドの肉体にしがみついて離さない。おっさんのねちっこい執着にメイドはたまらず「助けてー!」と全身全霊で叫び出す。と、近隣住民への行為発覚を恐れた小説家はこれまた全身全霊でメイドの口やら首を絞める(何故、首を絞めた?)。
全身全霊と全身全霊の一騎討ちの形となったが、やはり力的には男である小説家が有利で、なんと小説家は図らずもメイドを絞殺してしまう。ピクリとも動かないメイドを前に「大変なことになってしまった…」と変なこと言っていないのに、何か滑稽。

お屋敷でメイドを殺してしまった直後、来客がある。心臓が止まりそうになる小説家であるが、来客が弟と分かり、事のあらましをぶちまける。
話を聞き、死体を確認した弟は「警察に行く。」と善良な市民の義務を果たそうとするが、すかさず小説家が「ちょと待ってちょと待って弟さん」とは言っていないが、「ばれるのは困る。俺の立場にもなってみてくれ!頼む、見逃してくれ!」と殺されたメイドの立場にもなってみようよ。と思わずにいられない畜生発言を繰り出す。
この発言でわかるように、この小説家は類を見ないほどの自己中心的な性格を有しており、善良な弟はまんまと兄に引きずり込まれる。兄貴が自己中で勝手というのはまだ理解できるが、弟が兄貴に協力する意味がわからない。が、自分一人が映画の序盤で「意味がわからない」と思ったところで映画さん側で「柴三毛の畜生が納得するまで、一旦映画ストップ!」とはならないので、物語は自分を引きずりながら容赦なく進む。

結局、兄弟二人で仲良く舟で川へ漕ぎ出し、死体を川へ捨てる。アデュー、メイドの姉ちゃん。

メイドの死体を川へ捨てたその晩。小説家の兄貴は「ああ、頭が痛い!俺のことはそっとしておいてくれ!」と精神が非常に傷ついたような口を弟にきくのであるが、数時間後には当初から予定されていた晩餐会へ出席し、ご婦人方とニッコリ笑顔でダンスを踊りまくる。ここいらで、我輩はこの兄ちゃんがサイコパスかなんかだと決定する。

「小説家のメイド、謎の失踪!」と世間ではちょっとした騒動になるが、ここで小説家の兄ちゃんは商売っ気を出し、新聞に名前や写真が載った今こそ本の売り時だ!とサイン会や即売会を開く。どんな精神の持ち主なのか!で、また本が売れるんだな、これが!

結局、浮いたものが行ったり来たりする川のために、メイドの姉ちゃん(死体)は川底で永久に漂うことなく、再びあたい達の前に現れる。アロー、メイドの姉ちゃん。

失踪事件は殺人事件に切り替わり、あれよあれよという間に、容疑者が固まる。当然容疑者には、小説家の兄貴…ではなく弟が選ばれる(何じゃそりゃ)。
でも、最後は兄貴に即席の天罰が下り、一応終わる。

とりあえず弟が兄貴の殺人隠蔽に協力したのは、兄貴の奥さんにホの字だったため(不倫ツ・ラング!)とか、騎士道精神とかそういうことらしい。

この映画、ヒロインがまったくと言っていいほど活躍しない。綺麗なお花をお部屋にとりあえず飾ってみました、くらいの扱い。序盤に殺されて、中盤死体となって金髪を川になびかせたメイドの姉ちゃんのが、まだ存在感あった。

一番納得いかないのが、兄貴が川に死体を捨てるとき、不思議な閃光を見て、それ以降その閃光を日常でもフラッシュバックするようになるのだが、あの閃光は何だったの!
shibamike

shibamike