Jeffrey

ハウス・バイ・ザ・リバーのJeffreyのレビュー・感想・評価

ハウス・バイ・ザ・リバー(1950年製作の映画)
3.8
「ハウス・バイ・ザ・リバー」

冒頭、世紀末、潮汐のある河。ほとりの古風な屋敷、売れない作家、若いメイド、誘惑、抵抗、悲鳴、窒息死、片足の不自由な堅物な弟、失踪事件、小説、隠蔽偽装。今、自己中心的な狂気に陥り肉親を巻き込む…本作は1950年にフリッツ・ラングが監督したショッキング・スリラーで、この度DVDにて初鑑賞したが傑作だった。この作品はB級映画専門のリパブリック社の配給作で大スターが出ていないと言う理由から、半世紀もの間不当に過小評価されてきたそうだ。配給権も切れ、上映プリントも失われていたが、フランスの映画マニアで国際的な映画の伝道師として広く活躍するピエール・リシアンにより発掘され、近年評価が高まっているとのことだ。


さて、物語は妻が留守中の時のある出来事。家政婦のメアリーが妻の香水をした事により、妻を思い出した主人のスティーヴン。彼女を咄嗟に暴行し、殺してしまう。やがてスティーヴンは、弟ジョンに協力させて死体を河に捨てる。後にスティーヴンは小説を作り上げる。また、遺体は見つかり裁判へ。妻は小説を読んでしまい、その中身を知る。その時、スティーヴンが取る異常なまでの行動とは…。

本作は冒頭に音楽と共に大きな河が写し出される。ロングショットで捉えられた屋敷、そこに小説家の男スティーヴン・バーンが原稿を書いている。外では畑仕事をしている女性、河に汚物が流れてくるのを嫌がるアンブローズ夫人がスティーヴンに対策を求める。そこへ原稿が送り付けられてくる。それを持った若いメイドが現れる(ここで彼の奥さんが出かけていることがわかる)。彼は原稿の入った封筒を破り、中の紙1枚をくしゃくしゃに丸めて捨てる。

続いて、若いメイドが風呂場にいる。外のテラスで執筆をする主人、風呂の水が流れる音を排水溝から聞くスティーヴンがニヤリと笑う。メイドは洗面台にある香水を身に付ける。カメラは若いメイドのエミリーが階段から降りてくる足を映す。そこにスティーヴンがメアリーを無理矢理に襲う。彼女が必死に抵抗するのを止めさせるため(叫び声が外にいる夫人に聞かれるのをまずいと思った彼が口を塞ぎ窒息死させてしまう)。我に返った彼は自分のしてまったことに驚く。

そこに実の弟のジョンがやってくる。彼は事情を話して弟に助けを求める。最初は嫌がっていた弟も彼の強い懇願に負けてしまう。カットは変わり、スティーブンが何やら物置で何かを探っている。そこにジョンがやってきてやはり無理だ警察に話そうと言う。スティーブンはマージョリー(妻)の為にも助けて欲しいと改めてお願いする。それでやむを得ないとジョンは再度手助けすると言う。物置にあったズタ袋を用意してその中にメアリーの死体を入れる。 2人はそれを外に運ぶ(運んでる最中に隣人の女性に声をかけられ焦る)。

続いて、ボートで河を漕いでいる2人の描写、暗闇の月に照らされる河の水が美しく反射する。そして死体遺棄をする。疲れ切った表情で帰宅するスティーブン、メアリーが階段から降りてきたのと同じアングルで彼の奥さんマージョリーが降りてくる(これがデジャヴに思えて、彼は狼狽する)。妻はメアリーは何処と尋ねる。カットは変わり2人が寝室で会話をする(この時、夫は死体遺棄をしたときに飛び跳ねた魚のシーンが蘇る)。続いてフロアでダンスをする友人と夫婦の姿、それを離れた場所で眺める弟のジョン。

続いて、エミリーの母親らしき夫人が自宅へ寄ってきてエミリーが帰ってこないと言うことを夫妻に伝える。夫は夜遊びでもしているのだろうと言う。次のカットで新聞にエミリー失踪中1週間戻らずの記事を手にするスティーブン、新たに雇ったふくよかな家政婦と会話をする場面に変わる。そしてスティーブンはこの話を小説にまとめ出版する。そしてここから妻とのいざこざが少しばかり増え始める。

続いて、庭で原稿を読んでいた彼が、河から流されてくる布袋を隣人の夫人に指摘され驚く。彼は川へと向かう。カットは変わりマージョリーとジョンがスティーブンに対して話をしている。そしてやっとの思いでメアリーの遺体を発見し、木の棒でそれを手繰り寄せようとするが失敗する。カットは変わり、自宅へ帰ってきたスティーブンがジョンに死体袋を見つけたが見失ってしまったと言う。その袋にはジョンの名前が書いてあるので追われるのは私の方だと言い、スティーブンはにやけた顔をする。

翌日、警察官がやってきて、この袋にメアリーの遺体が入っていた。弟が行方をくらましているとスティーブンに話す。こうして、裁判が始まり誰が真犯人なのかが問い詰められ始めていくのだった…と簡単に説明するとこんな感じで、単純明快で誰が見ても楽しめる1本だ。この作品はオチが面白い。とりあえず主人公の男は最低最悪である。ネタバレになるため行いを伝える事はできないのだが、とにもかくにも最低である。

だが、メアリーを殺してしまうシークエンスで彼女が洗面台で奥さんの香水をつけるのは旦那を発情させてしまったきっかけの1つなのかもしれない。実際にスティーブンはマージョリーの影を思い出していたしその場面で。それと当時から印象操作と言うものはあって、裁判での証言台こ人々の話す言葉がからどう考えても証拠もあってジョンが犯人だと疑われても仕方がないような印象付けをしている。

ところで弟のジョンは足を不自由にしていたが、あれは一体何で不自由になったんだろう、映画では特に明らかにされていなかったと思うのだが…。余談だが、この作品のメイド役に監督は当初黒人を配役しようとしたが映画業界が許さず、白人と言う設定になってしまったそうだ。
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