貧困の犠牲となるのは、いつだって社会的弱者である。金の為、家族の為、転がり落ちるように殺し屋としての道を歩む少年ハイロは、その最も悲しい例と言えるのではないか。
ただ、映画の出来としては少々物足りない感もある。もう少し、家族や恋人とのやりとりを掘り下げても良かったのではと思われる。殺し屋としての仕事とそれらをあまり切り離してしまうと、ハイロが殺し屋を続ける理由がぼんやりとしてしまうので。
とは言え、死と隣り合わせの張り詰めた緊張感と閉塞感が自然と観る者を作品に引き込んでくれるし、クライマックスに向けてのスピード感は良く、相棒タイガーとの決別のシーンも衝撃だった。
ラテンアメリカの映画は政治的側面を持つ作品が多いイメージだけど、これもその一つ。実際に起きた大統領候補暗殺が描かれている。その実行犯であり、主人公ハイロのモデルと思しきジョン・ハイロ・ベラスケスは事件当時20代後半だったので、映画のような少年ではなかったけど、ウィキによると300人以上殺しているらしいので、殺し屋家業を始めた頃は少年だったと仮定すれば、この映画で描かれている大きな社会的問題にも照らし合わせてみることができるだろう。
映画のジャケットが中々に鬼気迫るものでそこに惹かれて鑑賞したんだけど、Filmarksには未登録なのが少し残念。