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コックファイターのcatmanのレビュー・感想・評価

コックファイター(1974年製作の映画)
4.0
1974年公開。ドキュメンタリーでジャック・ニコルソンがコーマンの映画について語っていた『たまに何かの間違いで撮れてしまう良作』 のひとつなんだと思う。闘鶏というユニークな題材とその暴力性と残虐性、主演のウォーレン・オーツが演じる愛嬌と哀愁が同居するイノセントに過ぎるオヤジの渋み、アメリカンニューシネマ的な乾いた演出と虚無的な空気感、そしてそれら全てを覆うディープサウスの呑気な田吾作感と、なんとも言えない独自の味わいが強烈。全般的に撮影も良くって、ハッとするような映像やカットに目を見張る。序盤のスロウモーションによる軍鶏のファイトシーンが、切なく響く劇伴と相まって特に印象に残る。

けれど本作はコーマンの膨大なフィルモグラフィーのなかで赤字を出した僅か2本のうちの1本なのだそう。まぁ決してシンプルでストレートな娯楽作品じゃないから無理もない気がする。そういや監督のモンテ・ヘルマンがコーマンのもとで撮ったオーツ&ニコルソン出演の不思議西部劇『銃撃』も普通ではない不思議な魅力が溢れる逸品だった。

ところで音楽のマイケル・フランクスって、あのマイケル・フランクス!? バイオリンやバンジョーの牧歌的な音色をフィーチャーした劇伴は、ボッサ風味のお洒落なAORとはまるで違うんだけど、ラブシーンのメロウな曲を聴くと確かにそんな感じがする。
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