シンタロー

マイ・シスター・アイリーンのシンタローのレビュー・感想・評価

3.9
小説家志望の地味なルースと、女優志望の容姿端麗なアイリーンは仲良しの姉妹。夢の実現と素敵な恋に憧れてオハイオからニューヨークへやってきた。半地下のワケアリ格安物件で共同生活を始めた2人は早速職探しへ。ルースは、自作の小説を送った出版社を訪れると、編集長のベーカーから、暗い恋物語ばかりでひねくれてる。才能はあるから、もっと身近な題材で書いてみろとアドバイスされる。一方のアイリーンは、顔はイイが演技が酷いとオーディションに落ちてしまう。帰りに寄ったカフェで店員のフランクと知り合う。芸能関係者がよく来るし、情報を仕入れておくから、明日もおいでと声をかけられるのだが…。
子役出身のリチャード・クワイン自らがフランク役を演じたブロードウェイミュージカルのリメイク作品を監督。共同脚本にブレイク・エドワーズ。振付師とフランク役の兼任でボブ・フォッシーという、とんでもなく豪華なスタッフ。ゴダールから絶賛されたというのに日本ではお蔵入り。初ソフト化されたのは主演ジャネット・リー没後という…その他キャストも粒揃いなのに、許されざる扱いを受けた幻のミュージカルです。唐突に歌やダンスが始まるミュージカルというジャンルは、若い頃?だったのですが、無条件に深刻さがなくお気楽なのが、歳とってから悪くないと思えるようになりました。本作の姉妹はキャラが素敵過ぎます。美人でモテまくるアイリーンの常に引き立て役ルース。ちょっと皮肉屋だけど、妹思いでとにかく仲良し。好きになった人とアイリーンを会わせまいとする密やかな抵抗が切ない。アイリーンも可愛いのを鼻にかけることもなく、朗らかでちょっと天然で、そりゃモテるわな。2人の恋模様は微笑ましく、応援したくなるし、歌やダンスのシーンは多幸感にあふれてます。姉妹と仲良くなる売れない画家アポポリスや元プロレスラーの筋肉馬鹿レック等々、周りもいいキャラ揃いで平和的。ブラジル軍のくだりはやり過ぎ感があるものの、終始ハッピーで楽しめます。
ジャネット・リーの歌とダンス!「バイ・バイ・バーディー」はあったけど、離婚後で妙に老け込んでたしなぁ。周りは芸達者揃いなので、相当頑張ったと思います。ボブ・フォッシーとのロマンティックなダンスシーンは忘れがたいです。相変わらずスタイル抜群!貫禄の素晴らしさを披露しているのはベティ・ギャレット。ジーン・ケリーやシナトラの作品で実力はわかってたけど、冴えないキャラに徹するコメディエンヌぶりが見事。表情も身のこなしもプロ。彼女の名演で完成度増々です。ボブ・フォッシーについては、本作ではロバート・フォッシー名義です。とにかく若い!後の活躍は言わずもがな。リーを取り合うトミー・ロールとのダンス対決は見所です。ジャック・レモンはあまり見せ場がなく、ちょこっと歌うくらい。レック役のディック・ヨークは「奥さまは魔女」のダーリンですね。本作ではリチャード・ヨーク名義。意外とマッチョで、歌もダンスも達者でした。
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