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死霊の暗殺/エトルスカンのhorahukiのレビュー・感想・評価

死霊の暗殺/エトルスカン(1983年製作の映画)
3.6
自由への脱出!

未踏の古代遺跡で起こる連続殺人!世紀の大発見にテンションぶち上げだった考古学者の夫が殺された…。きな臭い連中の暗躍。太古からその地に伝わる伝説。次々に起こる殺人。これは発掘を拒む遺跡側からの抵抗なのか?それとも欲に塗れた人間の仕業なのか?全編悪夢のようなマルチーノ製ジャーロ。

ジャーロらしくナイフでサクッと…ではなく、首を180度回転させて処していく謎なこだわりと剛腕っぷりを見せる殺人鬼さんが暴れ回る!オープニングからして既に、次々と首をクルクル回して殺していくスピード感を見せつけ、考古学者の夫も主人公と電話している最中に後ろから首をクルッとされてやられちゃう。ナイフでサクサクする方が簡単そうだけど、やっぱりパワーを見せつけたいのかな😅

ウジ虫だらけの悪夢、主人公にそっくりな遺跡壁画の女性、2つの尾をもつサソリの首飾り等シュールレアリスティックなオカルトテイストを匂わせたかと思えば、現地の怪しげな侯爵夫人、殺された夫と麻薬密輸組織との謎めいた関係、悪の組織同士の唐突でド派手な銃撃戦等、麻薬系クライムアクションのような様相を呈し始め、最終的にはミステリーに落ち着く…かと思いきや、遊び心のあるクライマックスで驚かされるという盛り盛りなお子様ランチ的贅沢セット!

理解する間もなく次の展開へと移行するだけでなく、名前覚えられないくらいにニューキャラが次々に参戦して消えていく使い捨て感等、物凄い情報量をばら撒き続ける。いや、流石についていけないよ…と思ってたら、3時間以上のシリーズとして撮影されたものを短縮したものらしい…😓そりゃわけわかんないよね笑

悪夢的映像からスタートする等のマルチーノらしさは衰えてはいても本作でも発揮されており、過去の映像と結びつく夢の中で主人公の深層部分が漏れ出て来ているのがわかる。主人公を演じるエルヴァイアオードレイは(申し訳ないけど)大根感が凄いのだけど、それが心ここに在らずな機械的印象を与えてしまっていて、それを見越してなのか一定の距離(バストショット)から徹底して撮り続ける会話シーンからは、夢で現れる深層部分と一致した感情が芽生えているように見えてしまう。マルチーノの意図通りなのか、偶然なのかは不明…😅

夫の背後の闇の空間を意識させた殺害演出にも、単純なスリルという意味だけでなく、そういった意図の反映としても機能しているように見えるし、だからこそ反帝国主義的な題材と舞台を選択したのでしょう。クライマックスの「死」を意識させる降りる行為と自由の女神の空撮もわかりやすいけれど効果的だし。もしかしてフルバージョンはなかなかな力作になってたのでは?とか思って悲しい…😭多分見る方法ないよね…。
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