住みたい街ランキングの上位に常にランクインする横浜の、本来の顔が見えます。みなとみらいエリアのキラキラしか知らない人には想像もつかないでしょう。明治の開港、戦後の進駐軍…そこには外国の匂いが良くも悪くも染み付いている。私が生まれ育った街を愛し、惹かれる理由でもある。拭っても拭っても現れるシミのようなもの。
メリーさんの噂は耳にしていた。一度今はなき松坂屋の前でお見かけしたような気もする。あるいは気のせいかもしれないが、しかし1995年末に横浜を離れたというから、有り得ない話ではない。
メリーさんをサポートしていたという元次郎さんの歌が沁みる。シャンソンは人生経験のある人が歌ってこそという気がする。
いまも横浜のダークサイドにはそこかしこにかつての遺構が残る。足を踏み入れたいような、避けなくてはならないような、複雑な魅力。
ラストに当時ご存命だったメリーさんが映る。壮絶な人生。後ろ指をさされ、蔑まれながらも誇り高かったという彼女の、白塗りを落とした穏やかな童女のような顔。あるいは語った経歴に虚飾もあったかもしれない。しかしそれも含め清濁合わせ飲んだ彼女の、貴重な生前の姿。
見応えしかないドキュメンタリーでした。UNEXTに感謝。