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狼たちの処刑台のcatmanのレビュー・感想・評価

狼たちの処刑台(2009年製作の映画)
5.0
当時77歳?マイケル・ケインの静かな熱演が身に染みる会心作。『キングスマン』のマシュー・ヴォーンが製作に参加している事から、主人公はケイン初期の当たり役であるハリー・パーマーの晩年をイメージしているという多くの方の推察は間違っていないと思われ(であればあの黒縁の眼鏡を掛けてほしかったなぁとは思う)、即ち本作は初めからマイケル・ケインのために作られた映画だと言える。ファンとしては非常に喜ばしい。

物語は復讐を動機としたよくある私刑人モノなんだけれど、本作がユニークなのは主人公がすっかり衰えた老人であること。大掛かりなスタントや銃撃戦、カーチェイスが無くても優れたクライムアクション映画になり得るというお手本の様な作品。おそらくCGは一切使ってないんじゃないだろうか。肺気腫を患った老人がフラフラになりながらも、しかし殺しや拷問を確実に淡々と実行する凄みたるや。ケインのあのクールな目元とソフトな語り口が一層その効果を上げている。また演出・映像・劇伴と全てに抑制が効いていて、全体を覆うイギリス特有のジメっとした陰気なムードは映画的な心地良さがあって非常に好み。実際にあんな物騒な地域には近寄りたくも無いですけど。直接的な説明を入れずに映像や台詞回しによって舞台や背景を語る演出も良くって、例えば要所に挿入される「この爺さんやっぱり海兵隊時代はIRAを相手に相当なエグイことしていたんだな…」と思わせる描写もケインの演技と相俟ってキャラクターに深みと説得力を与えている。BRAVO
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