延々と歩く

牛泥棒の延々と歩くのレビュー・感想・評価

牛泥棒(1943年製作の映画)
3.4
 自警団が暴走する、暗めの西部劇。

 牛泥棒を捕まえたのは良いがこれといった証拠がないし、しかし自警団では仲間を殺されたといきり立ってるのがいたり手柄が欲しいだけの奴がいたりでどんどんマズくなっていく。

 批評家の蓮實重彦氏が「今の監督は『牛泥棒』を見た方がいい。そうすれば自分の作品を10分か20分短くできるだろう」みたいなことを言ってて、前から気になっていた。

 それで見てみたんだけど…良かったですね。75分とそもそも短めなのに製作で揉めたらしくよう分からんロマンスが入ってたりして、正味一時間くらいの映画。それでも内容を伝えるには十分な密度があった。

 ただ個人的には「これが黄金期ハリウッドを支えた『ロストテクノロジー』…これをみないと70分の映画を撮ることは出来ない!」みたいな衝撃がくるかと身構えてたけど、そんなんでもなかった。

 「牛泥棒」を知らない監督でも、必要があればなんとか知恵を使って短い作品を撮るだろう…日本だと劇場側が2時間ちょっとの長さを求めると聞かされたこともあるし、配信サービスが流行って時間制限もゆるくなってるからそもそも「短くまとめる」需要ってあまり無いんだろうな~。

 つくる側の立場からすると作品なんて自分の子供のようなもの、出来るだけのびのび育ててあげたい・どれだけ長くなっても削りたくないなんて気持ちもあるかもしらんし…マーティン・スコセッシみたいな、もとから長い映画撮りがちな人が配信サービスに軸足をうつしたら3時間半の「アイリッシュマン」みたいな作品をつくっちゃって、新作のランタイムも同じくらいらしい…バ、バッキャロー!
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