似太郎

絶倫絶女 おじさん天国の似太郎のネタバレレビュー・内容・結末

絶倫絶女 おじさん天国(2006年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

本作、かなり個人的な思い入れのある作品で私事になり恐縮ではあるが、この場を借りて告白させて頂きますね(^^)

(この映画を観る迄の経緯)🦑🦑🦑

かなり昔(2005年頃)いまおかしんじの出世作であるポルノ映画『たまもの』を地元のシネマ・バーで鑑賞して主演した林由美香さんのトーク・イベントに参加した事がある。当時私はポルノ映画を観れる対象年齢ではなく(まだ17歳)だったんだが、林由美香さんが一部の映画マニアの間でレジェンドと化していたのでウキウキしながら挑んで観たのであった。

その数年後、林由美香さんが亡くなり震災後の2011年に平野勝之監督による『監督失格』を観て心から冥福を祈った。当時私は20代で郵便局でバイトをしており、精神的にも現在ほど落ちてはいなかった。大人になってからは映画に飽きてロックにハマり近くのロック酒場に出入りするようになった。

野毛の酒場だったかな? 主に横浜を拠点に活動するSSWの「ビト」さんのLiveに行き、彼が音楽を担当した映画がこの『おじさん天国』であるという情報をネット上で知ることができた。(それ以前にもいまおか監督の『かえるのうた』の音楽もビトさんが担当)。

偶然Liveで知り合ったSSWビトさんによれば、いまおか監督とは出身校の横浜市立大学時代からの盟友らしく彼の作品と意気投合して作っているらしい。また、自身のアルバムのプロデュースを担当した宇波拓(実験音楽家/大友良英の弟子)という人物がこの『おじさん天国』を生涯ベストワンに挙げているとの事で会話がますます盛り上がった。

「普通、ベストワンに挙げる映画は『七人の侍』とか『ゴッドファーザー』みたいなやつだろ」とか「彼みたいに映画をあんまり観過ぎると頭おかしくなっちゃうんだよ〜」と言っていたのが印象的だった。恐らく宇波拓という人は相当なマニアでいまおかしんじフリークなのだろうと悟り「これなら間違いない!」と確信して早速本作のDVDを中古で購入。意外と安かった。

鑑賞後は「ムムム…。何だ?この前衛期の大島渚のような作りは?」はという感想が頭に浮かんだ。ただの脱力ギャグで味付けしたポルノというよりも昭和のアングラ映画みたいな作りで相当ハードコア。これには参った。

たしかにみうらじゅん辺りが好きそうなサブカル臭もするのだが、根底にあるものは吉本隆明の『共同幻想論』とかスピノザの『エチカ』みたいな無世界論的なテーマである。眠くなると勃起してしまう絶倫おじさん(下元史郎)の夢の中に主人公達が放り込まれ、後半ラブホテルで絶倫おじさんの欲望の渦中(イカ壺みたいなSEXプレイ)と、その後現実世界でどデカいイカ🦑が釣れたと思ったらそれらの「現象」は全て絶倫おじさんの脳内イメージだったという意味に於いても。

相当イビツな物語構造を持った映画でやはり本作は一筋縄にはいかない超前衛映画のような気がしてきた。音楽プロデューサーの宇波拓みたいな思想的にヤバい人(極左)が本作を好むのは多分、そういう所から来ているのだと思う。
鬼才・いまおかしんじ監督と変な主題歌を担当されたSSWビトさんによる素敵な贈り物である。DVD大切に保管しておきますネ!🦑🦑🦑
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