jonajona

裏切りのサーカスのjonajonaのネタバレレビュー・内容・結末

裏切りのサーカス(2011年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

最高に渋いおじさん映画。
もとい、スパイ映画の傑作。

一度見た時は、なんだか難解すぎて脳みそが屈服してしまいました状態だったんだけど、あるサイトで補足説明を受けてから時間をあけて再鑑賞すると全てが洗練されてカッコよく見えてきて…
これは何かあの感覚に似てる…
そう、同窓会ラブです!(違う)
いや、当時気づかなかった魅力に気づいちゃうという意味では違うくない!!(違う)

…とまぁ、その補足解説ってやつが映画内で冒頭からチラホラ名前が出てくる『カーラ』というヤツについてのものだったんですが。これが何を指すのか分かるだけで確かにストーリーが鮮明に見えてくる。
『カーラ』というのは、主人公スマイリー(ゲイリーオールドマン)が務める英国諜報機関サーカスと敵対するロシアのKGBに座する大物スパイの名前です。つまり、宿敵のボスの名前なんですよね。
人名です。
これが厄介で、映画を油断してみてると人名なのか組織名なのかすら判然としません。そしてさらに厄介なのがカーラは最重要人物でありながら一度も姿が出てきません。遠くからマリオネット使いのような軽やかな手つきでスマイリーを罠にかけてきますが、顔は見えない。そのキャラについてもスマイリーの語り上でしか窺い知れない。

それがこの映画の厄介なポイントでありながら、一番渋くて深い魅力の一つだと思ってます。
最高に渋いゲイリーオールドマン演じるスマイリー。彼は、老境に入り猜疑心で狂ったサーカスのボス『コントロール』の死後、彼の遺言から組織内にKGBのスパイ『もぐら』が入り込んでると考え、密かに捜査を始めます。
しかし、コントロールは晩年信頼に足る人物かは怪しく彼の説も不鮮明…複雑に入り組んだ諜報戦の中、仲間といえど情報を得るのも一苦労。誰もが裏切りもののようにも見える。さらにプライベート。スマイリーが愛する妻は、実に奔放な猫のような人物でサーカスのメンバーのある男と…と雑念が入り乱れます。そもそも忠義を尽くすべき国なんてものは本当にあるのか疑わしくなってくるのです。

対して、カーラ。
彼はスマイリーの語りから知る限り、十数年前まで新米スパイで、当時サーカスに捕まりスマイリーから尋問を受けました。
国を売るようにスカウトしたスマイリーの提案をはねのけ、カーラは彼の情報を逆に抜き取れるだけ抜き取って自国へ帰還します。戦時下のスパイが帰国送還させられることは、寝返った証ととられ本来ならば結局は死が待っているものです。しかし、カーラはそれでも帰還し、死ぬことなくロシアの中でさらにのし上がりKGBのトップとして再びスマイリーの前に立ちはだかるんです。
仕事に一貫した姿勢で、信念を曲げなかった男、それがカーラなんです…!

そう思うと、これすごく熱い。
そんな最強の仕事人間カーラと、裏切りや疑心暗鬼が渦巻く腐敗した組織サーカスで、自分の存在意義を揺らされながらも必死で信念を叩き上げていくスマイリーの対決の物語なんだと思うと…痺れる!!

さらにいうと、サイドストーリーがむしろかなり重厚で、そちらの魅力もそれぞれ別の映画が取れそうな程なんです。
つまり最高の映画です。
ラストの切れ味が渋すぎます。ぜひ
jonajona

jonajona