アメリカ映画のように派手にスターが格好よくキメながらやるのではなく、真冬のなか短パン半ズボンで無言で疾走しながら刑務所から脱け出す→自分を冤罪に陥れた身内を殺害を繰り返すマックス・フォン・シドーの淡々としているようで東北出身者としては凄い無茶をやっていてハラハラする展開が独特の渋い味わいを醸し出す佳作。何故彼が免罪になったかを過去パートを使ってくどくど説明せず、登場人物の会話で匂わせていく語り口が粋でいなせ。
冒頭理由も語らず殺しに向かう主人公をいきなり出して登場人物の興味をひき、肝心のどういう風に刑務所から脱獄したのかを引っ張って後々披露していく語り口もうまい(巧妙というよりは根性で刑務所から出ているようなところもあるけど)。
ただ冒頭殺される女性の母親でシドーの妹でも女性を演じるベルイマン作品の常連にして元奥さんのリヴ・ウルマンがいかにも怪しすぎなオーラを出していて、終盤の展開が読めてしまうのが難点。まあ推理がメインではないので気にならない人はならないかもしれない。
オチがイギリス映画らしくシニカルでユーモア、こんなことになったら劇中のシドー同様笑うしかないな。
