こたつむり

ナイトビジターのこたつむりのレビュー・感想・評価

ナイトビジター(1970年製作の映画)
3.8
♪ 僕が壊れても ねぇ、わからないでしょ?
  もう、君の事なんか わからないくらい…

本作を一言でまとめるならば…。
ギリギリまで削り込んだ骨のような作品。
いや、一人『プリズン・ブレイク』。
いや、一人『アンチャーテッド』。
いや、煉獄の焔に焼かれた罪人の復讐劇。

何はともあれ、圧倒的なのです。
特に主演のマックス・フォン・シドーは「これを熱演と呼ばずして何が熱演か」と言いたくなるほど。極寒の中、下着姿で走り回るのも苦ともしない熱量はさすがでした。

しかも、作品自体に贅肉がないんです。
限られた舞台。限られた登場人物。限られた台詞。研ぎ澄まされた演出は武骨と呼ぶに相応しく、画面全体で殴りかかってくるかのよう。

いやぁ。スゴイですねえ。
最近の映画は観客寄りになっていることが多いんで、最初はかなり戸惑いましたが…慣れてきたら、俄然前のめり。先が気になって仕方がありません。

追う側と追われる側。
狙う側と狙われる側。
その対比が見事に決まっているので、途中でダレることがないのです。

ただ、全てが手放しで褒められるわけではなく。
昔の映画ならではの“荒々しさ”を飲み込む必要はあります。

例えば、さすがに凍傷になるだろ…とか。
例えば、偶然に頼りすぎだろ…とか。
例えば、服を着た時点で気付くだろ…とか。
ツッコミどころは満載なのです。

でも、それらは、あくまでも作品の“従”。
“主”となるべきは、俳優さんの演技であり、熱量が迸る脚本であり、それらを統括する監督さんの想い。その本質を見誤ると奈落の底に落ちることでしょう。

まあ、そんなわけで。
1970年代の雄々しさは一見の価値があると思いますので、予断を排除して臨んでほしいサスペンス。色気も旨味もありませんが、それでも面白い作品は作れるんですね。
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