フジタジュンコ

気狂いピエロの決闘のフジタジュンコのレビュー・感想・評価

気狂いピエロの決闘(2010年製作の映画)
4.8
むちゃくちゃだ!! なんだこれ!!!面白すぎる!!!!

全シーンが神がかっています。イグレシア監督ならではの画の美しさとキャラクターの狂気と怒涛のストーリー展開に、107分の本編が体感20秒。1コマたりとも手を抜かないこだわり、衣装もセットも街並みもすべて美しく、そして狂っている。これはすごい作品です。

イグレシア監督は狂気と混沌のトンデモ監督かと思っていたのですが、権力や衆愚への冷徹な批判をずっと描いていたのですね。本作もメインとなるのはピエロ2人が美しい女性ひとりをめぐる三角関係なのですが、スペイン内戦にはじまり、フランシスコ・フランコ独裁政権末期の1970年代を描いていることに鑑みると、ファシストとコミュニストをふたりのピエロに託し、何が正義で何が悪なのかをぐらつかせながら、内戦と独裁によって疲弊したスペインの姿をユーモアたっぷりに、悲哀をもって描いているように思います。いやはやお見事。