垂直落下式サミング

座頭市血煙り街道の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

座頭市血煙り街道(1967年製作の映画)
4.5
とある縁から座頭市が子供を父親のもとに届ける旅をすることになるシリーズ第17作目。
冒頭の挿入歌で勝新の歌が聞ける。とりあえず生意気な子供を絡ませることでそれっぽいドラマを展開させ、旅の一座の中尾ミエがイキイキと歌ったり、一座から金を取ろうとするケチなヤクザが出てきたりと、徐々に雲行きが怪しくなりだしたシリーズの低迷期に片足を突っ込んだユルさ全快の雰囲気ではじまるのだが、最後のチャンバラ対決のあまりの凄絶さに圧倒される!
やはり、本作の白眉は近衛十四郎VS座頭市の決闘だ。保守本流の正統派長刀剣術と外道の居合剣法の対決は、重く艶やかな勝新座頭市の真骨頂が存分に発揮されている。さらに見事なのは、敵役をかって出てくれた大先輩スターの顔をたて花を持たせる決着の素晴らしさ。お役目としてはエロ皿の規制をしている役人という面白設定だが、座頭市が刃を交えたなかでは間違いなく最強クラスの剣豪のひとりであり、この一点のみだけをみたとしても、シリーズ屈指の傑作だと断じることができる。
私がシリーズのなかで一番好きな『座頭市あばれ凧』もそうだが、ユルめの娯楽作としてはじまるのに、次第に残忍な描写が所々で入り込んできて、息のつまるような命のやり取りの末にドスンと超ヘビーに終わる。そういうやつが好みなようだ。