Eike

恐怖の魔力/メドゥーサ・タッチのEikeのレビュー・感想・評価

3.3
1978年制作の英仏合作のサスペンス・ミステリ・ホラー
話題作だったのに日本では何故か公開されませんでした。
当時からなかなか面白いらしいと噂になっていた作品です(当時はネットなんてなかったから…)。
78年と言えばアメリカから「エクソシスト」「オーメン」「ジョーズ」そして「スター・ウォーズ」といった作品が次々と登場して世界を席巻していた時期に当たります。
そんな流れの中にあって、本作はやはり英国映画。アメリカ映画とは一味も二味も違ったものに仕上がっています。

リチャード・バートン、リノ・バンチュラ、そしてリー・レミック。
「只のホラー映画」にしては渋すぎる布陣ではないでしょうか。
お話自体はミステリでもありますのでできるだけ予備知識なしでご覧になった方が良いと思います。
人の心の闇とそこに生まれた邪悪な「何か」がもたらす災厄が次第に巨大化して行く悪夢がジワジワと恐怖感をかもし出しております。

大きな特徴はこの配役を見れば一目瞭然でしょうが「本格的なドラマ」であること。
特に物語の鍵を握る邪悪な力を宿した男性を演じるR・バートンは流石の一言。
なまじ実力のある役者がこうしたジャンル作品に出演する際に中途半端な演技をされれば見てる側からすれば白けてしまうところでしょうが徹底してシリアスに演じきっております。
特にジャケットにも映っておりますが「視線」の力がすごくてかなり怖い。
対するのがとにかく渋いリノ・バンチュラ。
そこにいるだけで軽妙さとフランスの洒脱を伺わせてこちらもさすがですね。
彼の持つ人間味がややもすれば陰鬱になりかねない物語を救っております。
元々は英国人刑事だった役をフランス人(バンチュラ氏自身はイタリア出身ですが)に変更したのはフランス資本獲得への配慮だったらしいですがこの変更は悪くない気がします。
そしてR・レミック。
「オーメン」同様、見事なまでの絵に描いたような英国淑女。
どこか悲しげで気品のある美しさがやはり効果的。

オープニングこそ古めかしさを感じさせますが引き込まれるのは何よりお話そのものが中々に力強いから。
ミステリとSF・ホラーの組み合わせも余り例がない訳で興味深い。
そこに味のある役者陣の演技が加わるのですから映画ファンにとってはたまりません。
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