にく

恐怖の魔力/メドゥーサ・タッチのにくのレビュー・感想・評価

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ジャック・ゴールド『恐怖の魔力/メドゥーサ・タッチ』。78年の超能力もの。ある中年作家が何者かに殴られて意識不明の重態に陥る。この男がかかっていた女性精神科医によれば、彼は念じるだけで人を殺せるのだという。で、こやつ、飛行機もビルに突っ込ませて見せるのである。9.11そのままに。さてこの映画、男を追う刑事が女医を尋問していると、診察室に置かれたウィスキー・グラスのショットをつなぎとして、いつの間にかフラッシュバック・シークェンスに突入している。しかも今度は、診察される男の顔から切り返すカメラがさらなるフラッシュバックを呼込むので、時制は混乱を極めるのだ。男は依然として昏睡状態にあるにも関わらず、他人の回想の中で更なる回想の主体となり、自我他我の区別なき深みから超能力を発動する。標的はイギリス王室と国教会の殿堂、ウェストミンスター寺院。国家の正史という名の確固たる記憶は、不確かな主体の不確かな記憶によってこそ崩壊の危機に晒される。
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