小波norisuke

神曲の小波norisukeのレビュー・感想・評価

神曲(1991年製作の映画)
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覚悟はしていたつもりだけど、手強い。オリヴェイラ監督が82歳ぐらいの時に公開された作品。

「精神を病む人の家」という表札が掲げられた美しい邸宅が舞台。アダムとイヴやイエス・キリストをはじめとする聖書の登場人物と、ドストエフスキーの「罪と罰」や「カラマーゾフの兄弟」の登場人物、ニーチェとおぼしき哲学者や預言者が、舌戦を展開する。

聖書の人物には親しみがあるが、ドストエフスキーの小説はどちらも挫折してしまったので、面白みがよくわからない。おそらく、信仰とは何か、宗教とは何か、罪とは、などの深遠なる問いを投げかけているのであろうが、いまひとつわからない。だけど、この監督独特の人を喰ったようなとぼけた描写が、そこはかとなく可笑しく、愉しい。

とにもかくにも、こんな世界を作りだしてしまうのがすごいと思う。

イヴがとても美しい。ニーチェが色めいてしまうのも仕方ない気がする。

唖然とさせられたけれど、貴重な映画体験だ。

立見が出るほどの大盛況。上映終了後は、皆、首を傾げながら小さく笑っていた。「永遠のオリヴェイラ」、第二弾も楽しみ。
小波norisuke

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