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さすらいの用心棒/暁のガンマンのTnTのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

 冒頭、ある馬車が襲撃される。追手たちはしかし、目的の男がいないと知り、去っていく。エンニオ・モリコーネの物悲しげな音楽と共に、馬車の中で死んだ女にカメラが寄っていく、情感たっぷりに。こんなはじまりだが、実はコメディ映画も兼ねたエンタメマカロニウエスタンなのだ!

 主人公のビリーは、その死んだ女、つまり愛人の元に遅れて足を運んできた。そこで通りすがりのハリーが、その不憫な彼の手助けをする。しかし、このビリー、実はとんでもない悪党で、これがハリーの運の尽きとなるのだった。このビリーとハリーのコンビネーションが愉快愉快。ビリーが手を汚して得たあらゆる利益の尻拭いを毎度毎度ハリーはすることになる。そのハリーの「なんで俺が?」みたいなキョトン顔が可笑しい笑。その一方、ビリーは未亡人妻とシケ込んでいたりするのだ(チキンとベットと穴掘りの可笑しさ!)。

 こんなはたから見たらど畜生なのに、ビリー演じるジュリアーノ・ジェンマの色男ぶりと笑顔に、どこか憎めないところがあって、はまり役だった。そんでもってめっちゃ女たらしというのが納得である。また、流石イタリアといえる、ちょっと呑気、いやノーテンキな雰囲気が常にムードとしてあった。鉱山から帰ってきた男たちを迎えるためにパチモンの人魚の見世物小屋を経営してる人々がいたりするのも笑える。ハリーの図体のでかさと怪力が、ビリーに裏切られては炸裂するというお決まり芸みたいなのも飽きない。イタリーの大らかさあってこその映画だったのだ。

 ただ、銃撃戦は他の西部劇より断然少ない。しかしむしろ、銃撃ばかりでマンネリ化してる他のウエスタン映画に比べると、良くできた脚本だったのではないだろうか。今作品はだから、この主人公ふたりの掛け合いの面白さに掛かっている。そして、毎度騙されるハリー視点で観客はいつの間にかビリーを追ってしまっていることに気がつくのだった。また伏線も他の西部劇に比べて多い。火を吹く、うさぎを飼うというのが、なかなかいい味を出してあとあと響いてくる。

 ラスト。ビリーの過ぎ去った後は、本当に死体だらけで、もちろんラストもそうなるのだった。もはや呪われていると言っていい程の悪運をぶら下げて去っていくビリーに、「旅は道連れだ!」と着いていくハリーの姿に思わずジンときてしまった。名コンビここに現る。

 関係ないが、敵役のロジャーを演じた男にどこか見覚えがあって誰かなと調べたら、フェリーニの「悪魔の首飾り」に出てたウエスタン帽子をかぶったスタントマンの役をしていた男だった!フェリーニって結構こういう、いわゆるメタ的な配役が多かったりして、イタリア人からしたらまた面白い見方ができたりするんだろうなと思った。
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