note

さすらいの用心棒/暁のガンマンのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

3.3

このレビューはネタバレを含みます

親の遺産である牧場を再建するため鉱山で働いていたハリーは、流れ者の青年ティムと出会い、意気投合する。地道に稼いだ金のことをつい話してしまったハリーは、ティムの勧めで銀行に金を預けることに。ところが実はそれはティムのペテンだった…。

マカロニ・ウエスタンと言えば、欲望や復讐に囚われた人間たちのギラギラしたドラマが定番。
本作は意外にもコメディタッチなのが、昔の作品なのに斬新に感じるマカロニ西部劇の佳作である。

探し回った末にようやくティムを見つけたハリーだったが、ティムは人魚ショーの見せもの小屋に金のほとんどをつぎ込んでしまっていた。
「すまんすまん、新しい儲けがあるからすぐに返すよ」というティムの口車に乗って一緒に旅をすることになるハリー。
ニセの電報屋をやったり、葬儀中の未亡人を騙したりで、ティムはペテン師で女たらしだということが次第に分かってくる。

なかなか金が集まらないことに焦るハリーがティムに幾度なく詰め寄るが、「じゃあ、お前の特技で稼ごう」とはぐらかされ、強い酒で火吹き男のマネをさせられる始末。
ハリーはとことんお人好しだ。

やがてティムを追っていた悪党たちに見つかり、本当は銃の使い手である本領を発揮するティム。
ティムの本当の名前はビリー・ボーイといい、かつて悪党一味を抜けるときにボスの息子を殺したために追われていたのだった…。

甘いマスクと爽やかな笑顔でマカロニ・ウエスタンきっての二枚目スターとして人気を誇ったジュリアーノ・ジェンマ。
本作では、一見お調子者のようでいて、実は凄腕のガンマンのティムを軽妙に好演。
一方、彼とは対照的に、力持ちだが少々間が抜けたお人好しの相棒ハリーを「ブリキの太鼓」マリオ・アドルフが愛嬌たっぷりに演じ、2人の凸凹コンビぶりが楽しい珍道中ロードムービー。
笑いの合間にガンアクションを織り交ぜた娯楽作に仕上がっている。

途中寄った鉱山で金塊をニセの馬車で運ぶという大金をゲットする方法を思いつくが、そこで仲間となった男が護衛の軍隊に発砲し、軍からも追われるマズイ状況に。
2人は金を奪わずに逃げていくのが情け無い。
そして、ハリーが父から継いだという牧場へと向かうのだが、追手はじわじわと忍び寄ってきていた。

追い詰められる2人だったが、ティムが悪党の持っていたダイナマイトを利用して、一味をハリーの家もろとも木っ端微塵に。
悪党を倒したもののハリーの夢も砕け散る。
申し訳なく思ったティムは再び旅に出るとハリーに伝えるが、ハリーは「旅は道連れだ」と言ってティムの後を追うのだった…。

ティムが入れ込むのが明らかにペテンと分かるものばかり。
ハリーがお人好しすぎて何度も騙されたり、巨漢のせいで何度も床を踏み破るのが笑える。
それにしても、客観的に見るとティムは相当な疫病神。
ハリーの金を騙し取り、浪費した人魚一座もティムを追ってきた悪党の手にかかって死んでしまう。
ハリーの家を巻き添えにして、倒したのは元々は彼の仲間である。

悪党に捕まり、縛り首にされそうになるハリーをティムが遠くからライフルでロープを撃つという「続・夕陽のガンマン」にオマージュを捧げたようなシーンもあるが、マカロニ・ウェスタンなのに、ヒーローもアンチヒーローも存在しないというのは意外。

痛快さとカタルシスに乏しいのが難点であるが、陽気でケチなペテン師を主役にしたのが実に庶民的な西部劇である。
日本では劇場未公開でTV放映がされたのみ。
1969年製作という時代を考えると、正義でも共感できる敗者でもない主人公の物語は時代のニーズに合わなかったのだろうが、飄々と生き残る主人公は不思議と格差社会で庶民が虐げられる現代にマッチしていて、自由人として羨ましく映る。

配信で見れたのはありがたい。
再評価されるべき作品の一つだろう。
note

note