あなぐらむ

エブリデイ イズ バレンタインのあなぐらむのレビュー・感想・評価

4.3
黎明(レオン・ライ)、張柏芝(セシリア・チャン)共演のラブコメディ。
日本ではたしか映画祭のみの公開。

監督は香港映画の王道監督、歩く香港こと王晶(ウォン・ジン=バリー・ウォン。90年代はどこもこの表記だった)。
プロデューサーにしてライターにしてディレクター、ヒットするものなら何でも手を出す、ある意味ジェリー・ブラッカイマーみたいな人。ユンファの「ゴッド・ギャンブラー」の監督さんであり、「レディ・ウェポン/赤裸特工」のプロデューサーでもある。

お話は他愛のないもので、抜群に口(嘘)がうまい男・OK(名前です。レオン)と、まだ初潮が来ていない特異体質の純情(…でもテクニシャン)な女の子・ワンダフル(これも名前。セシリア)の恋の顛末、といった感じ。

ワンダフルがOKの事を、自分の働く会社の若社長の従兄弟だと勘違いしてしまった事から、OKは仲間もフル動員で、将来は副社長となる予定のこの従兄弟になりすます大嘘をつき続けるハメになって、そこにOKにほれ込んだセクシーな社長の妹なんかも絡んで事態は思わぬ方向へ、という展開。
チョウ・ユンファの往年の傑作「大丈夫日記」を彷彿とさせるOKと仲間達の嘘八百ぶりが凄くおかしくて、かつ、いつバレるのかとハラハラさせる。
そして肝心のワンダフルは、元カレに嘘をつかれ自分の親友と関係を持たれた事から、男性の嘘だけは赦せないというからさぁ大変。
OKがガンバレばガンバるほどワンダフルを裏切っていくという切なさ。そしてついに……。

ジョニー・トーの製作/監督するような映画を観てるとオシャレで小粋な感じの物が多いが、王晶の映画はいい意味で泥臭くて、ベタで、どぎつくて、それでいて温かくて、観ていてなんか安心する。
そうそうこれこれ、こう来てくんなきゃね、みたいな。
それでいて王晶のドラマ作者としての腕は、決してジョニー・トーに引けを取らず、このお話を見事に着地させて楽しませてくれる。
(執行導演に葉偉民/ウィルソン・イップ=「バレット・オーバー・サマー/爆裂刑警」)

レオン・ライが実に楽しそうにこの大嘘付き男を演じてて、クールな感じじゃないのが凄くいい。この人は「ラブソング」の時も思ったけど、ちょっとヌケてる感じの役がむちゃハマる。黒縁のメガネも似合ってて、眼鏡好き女性(うちの嫁)にはドンピシャ。
セシリアはこの頃には以前よりも痩せて一層美しい。もうOLさんを演じる歳なんだなぁと思ったり(10代デビューでした)。彼女は顔に似合わぬダミ声なんだけど、それがまた可愛いわけで。彼女出演の映画は日本でも公開されているものが多く「星願」「東京攻略」「十二夜」「喜劇王」そして「少林サッカー(何故か男の役)」等など。
気になった方は探してチェックしてみて欲しい。「星願」はオススメ。泣けます。日活さんが権利持ってると思うのでどこかで配信してるでしょう。

本作はキャストが妙に豪華で、何故かセシリアの親父さんがン・マンタおじさん(シンチーの盟友)だったり、レオンの不動産屋の客がラム・シュだったり、ちょい役でクリスティ・ヤンが出てたりと、さすが王晶って感じのメンツがどんどん出てくる。そのヘンも楽しい。
マーク・ロイ(「周末狂熱」、ケリー・チャンの楽曲プロデューサー)が音楽を担当してて、粋な劇伴をつけている。

このお話ではネパールのお坊さんが重要なキャラで登場するのだが、実は「正直に生きる事が一番大切」というシンプルで強度のあるメッセージを込めた、仏教的な物語でもあるのだった。
日本タイトルは英題の直訳。劇中にもセリフがある「幸せな気持でいれば、毎日がバレンタインさ」という意味。

疲れたときには、こういうベタな香港映画こそリフレッシュにつながります。皆さんもぜひ。