このレビューはネタバレを含みます
小説を読みました。ハネケ監督がどうしてカフカの『城』を映画化したかったのか知りたくて。元々はテレビ映画だったらしいので、「ハネちゃん、これ撮ってよ」とプロデューサーに頼まれて嫌々作らされていなければの話ですが笑
映画は小説を忠実に再現しています。役者もほぼイメージ通り。ただ、小説に比べてセリフが極端に少ない。これは映画の尺と構成の問題だと思いますが、少ない分、登場人物の魅力や真意があまり伝わってこない。
小説のKは論理的で知的な印象なんですが、映画だとセリフが少ないためその魅力が出ていません。
特に思ったのが、ラスト近くでペーピーがKにフリーダのことについて話をするシーン。小説では「測量師でいるのになにもすることができなければ、やっぱりまるっきりの無だわ」とKを非難するけど、映画だとカットされている。
カフカは職業や身分が他人からの価値を決め、また、Kが「城」に結局辿り着けないのは各々の職域の中でしか決定出来ない「肩書き主義」の産物であり、その理不尽さを描きたかったのだと思っています。
そしてハネケ監督もそうだったとするならば、毎度の「解釈はご自由に」は本作が一番キツイかもしれません。