ドナウ

シュトロツェクの不思議な旅のドナウのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

この監督にとってフリークスとは何だったのだろう。他の作品にも弱者が登場するが彼らへの眼差しは厳しく冷たい。それは愚か者のように馬鹿にしたり差別的に描かれているように感じる。ブルーノ・Sの朴訥とした佇まいは純粋さの象徴にも見えるけど、ラストのニワトリはひどく露悪的…ピアノが友達の言葉を話さぬ鳥頭の道化。じゃあ監督が彼らを嫌悪しているかと言ったらそんなことはないと思うし、未熟児の力強さを肯定し娑婆へ出ていくブルーノを心から心配している。差別意識がないからこそこういった作品を繰り返し撮り突き放せるんだと思う。もしかしたらある種の娯楽化なのかトッド・ブラウニングのフリークス(未見)とも通底しているような気もする、ニワトリとか。移民や原住民同士の仲間意識と社会での疎外感はこれまで撮ってきたヘルツォーク的弱者と似ていて、このアメリカとドイツの違いになにかヒントでもあるのかもしれない。本作はイアン・カーティスの逸話でカルトしてるけど、悲劇的な緊張ばかりでなく、ヴェンダース的なロード・ムービーだったり男二人のボニーとクライドだったり緩和がちゃんとあって割と見やすい。ブルーノ・Sの吟遊詩人のような独特な語り口と雰囲気が大好きで、ヘルツォークにもっと彼を撮って欲しかった…。

小人の饗宴でも使われた無人のまま円を描く自動車は一体何だったのでしょうか…。
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