菩薩

手を挙げろ!の菩薩のレビュー・感想・評価

手を挙げろ!(1967年製作の映画)
4.0
85年の改訂版を鑑賞。この映画が元で国外での活動を余儀無くされたスコリモフスキが、当時の検閲官に対し恨み辛みをひたすら言い連ねるかなりパンキッシュなプロローグが約25分付随しているため、本編自体は1時間にも満たない作品だが、どうやら本人曰くこれが自らの最高傑作らしい。かつては理想主義・非順応主義に燃えた青春時代を共に過ごした仲間も、今ではその鍵束の数だけ、物欲と名誉欲に染まり肥大化したつまらぬ大人と成り果てた、そんな姿が埃と石膏、そしてロウソクの炎が照らす貨物列車の車内で浮き彫りにされていく。今は家畜を運ぶその車両は、かつてはユダヤ人をアウシュビッツへと運んだものであり、彼らの父親・母親はそんな世代に当たる。ポーランドにおける闘争の形は今や「連帯」へと引き継がれていったが、青春時代を通過した彼らには最早何かと戦うなどと言う信念も体力も残されてはいない。だが当然この作品は69年、連帯以前の作品である、それでもガチガチに固められたしがらみを脱ぎ捨て手を挙げろ!と、降伏では無く闘争の為の拳を挙げるのだとこの作品は我々に訴えかけてくる。劇中の「四つ目のスターリンの肖像」が元で上映禁止になったらしいが、うんまぁ確かにねぇ…って感じ。メタファー、メタファーの連続で分かりにくい作品だが、強烈なインパクトは残る。
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