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愛と怒りのbirichinaのレビュー・感想・評価

愛と怒り(1969年製作の映画)
3.5
福音書の寓話を題材にしたオムニバス作品。ベルトルッチの作品は前衛的過ぎて(?)よく分からなかったので★2。

①「無関心」 L'indifferenza(カルロ・リッツァーニ)
題材:「善きサマリア人」
レイプやひき逃げ、隣で起こっている不幸に人々は無関心。ただ一人、渋々ながら手助けするのは前科者の男というのがシニカルだ。だが手助けしたことで男は苦境に立たされる。前科歴を照合する警察の機械の音がスリリングだった。

②「臨終」 Agonia(ベルトルッチ)
題材:実のならないイチジクの木
臨終間近の聖職者が、若い信者たち(アングラ劇団員みたい)に囲まれて「私を助けて」とか言われている夢を見る。理解不能…信者たちの祈りの声が気味悪かった。
お世話係の女性:(目じりを横にひっぱって)「これ何だ?」
主人公:「中国人」
という会話は何だったのか?

③「造花の情景」 La sequenza del fiore di carta(パゾリーニ)
題材:実のならないイチジクの木
おぞましい事件や社会問題の舞台となったローマの通りを主人公の若者が子供のような屈託のない顔をしてぶらぶら歩いている。天上から神が「無邪気(innocenza)は罪だ、(歴史を)学べ」と諭すのだが、若者に声は届かない。この若者は仕事もしていないという設定なので、見た目は庶民だけれど、わりと裕福な家庭の子息という設定か?
残念ながら、通りの映像にインサートされる歴史的事件などの映像がどのような事件や社会問題の映像なのか分からなかった。イタリア人だったら普通に分かるのだろうか。
神たちのセリフが「おい リチェット、聞いてるか?」「ダメだ、全然聞こえてない」とか庶民的なのが面白かった。
パゾリーニは変人というイメージだったが、この作品ではまっとうなメッセージを投げかけていた。

④「放蕩息子たちの出発と帰還」 L'amore(ゴダール)
題材:放蕩息子たちの出発と帰還
まさに奇才の作品!ぼんやりとしか理解できなかったが、とても魅かれた。いつもながら女優をすごく魅力的に撮っている。
庶民の出で革命家の青年とブルジョワ家庭の娘のエピソードは分かりやすかったが、それを見ている男女カップルの会話「映画とは…」とかが難解だった。
女性たちはフランス語、男性たちはイタリア語で、ほぼ同じセリフを繰り返し言い合うのだが、フランス語の響きは甘く、イタリア語の響きはシニカルに聞こえた。
ブルジョワ家庭の娘の後ろ姿のヌード、有名な絵画のようだった。

⑤「議論しよう、議論しよう」 Discutiamo, discutiamo(ベロッキオ)
題材:?
60年代後半のローマの大学紛争の様子を実際の学生たちが演じている。ひらすら喋りまくり議論しまくりで疲れたが、当時の大学や学生運動の様子が分かって興味深かった。具体的には、学生の中にも庶民の家庭とブルジョワ家庭の子息子女がいて、前者は大学革命を志し、後者は全く無関心で対立していたこと。教授や講師陣の中にも事なかれ主義の大教授(ベロッキオが演じているらしい)や政治活動をしている社会共産主義者の先生がいたことなど。
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