惡

ニックス・ムービー/水上の稲妻の惡のレビュー・感想・評価

3.7
死を目前に控えたニコラスレイと彼の30以上も齢の離れた友人でもあるヴェムヴェンダースによる共同作品。ニコラスレイのことを親しく‟ニック”と呼びつつ、友人としてではなくこの映画を監督としてあくまで冷徹に仕上げようとする姿勢に胸を打たれる。骨と皮だけの痛々しい姿になり、ときには血を吐きながらも教壇に立ち続け死の直前まで舞台演出をするレイとそれをカメラに収め続けるヴェム(と若き彼の仲間たち)の姿は否が応でも人生における残り時間を見ている我々に突きつけるし、「映画とは?」なんて自問させる。ところどころで手持ちカメラによる映像が突然挿入されたり、鈴木清順ばりの極彩色な照明が炸裂するが、死を前にした二人の姿はあまりに普遍的で、ラストの「Don't cut」と叫ぶ彼の姿を本作を観た人はその後の人生で忘れることはないだろう。
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