ブタブタ

CASSHERNのブタブタのネタバレレビュー・内容・結末

CASSHERN(2004年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

映画(又は監督)の評価でこの監督は映像作家でストーリーが描けない~と言う評価を時々見ますが、紀里谷監督の場合は映像作家ですら無くて写真作家なんだと思う。
1枚1枚の決まった止め絵が頭にあって、それを再現する為にそこに至る迄のストーリーらしき物、アクションがあるので止め絵が来た時点で動きが止まってしまう。
だからテンポが悪くてアクションがちっとも楽しめないしノレない。
キャシャーンが実写版デビルマンと同じ位評価が低いのは、この作品を届ける先の客層がアニメ・漫画ファンではないと言う事が少なからず起因してると思う。
紀里谷監督はアニメや特撮とかには基本興味無いのだろうし、この作品がその界隈の住人にソッポむかれるのもわかる気がする。
アニメ好きが興奮する喜ぶ要素もマインドも一切無いし感じないし。
作りとしては蜷川幸夫の『蜷川マクベス』でシェークスピアの作品をストーリーを変えず時代設定を変えると言う物。
紀里谷監督がやりたいのは決してタツノコアニメのキャシャーンでなくシェークスピアやギリシャ悲劇と言った物でキャシャーンはそのフォーマットとして使っただけに過ぎないのだろうと思う。
主人公にはヒーローとしての魅力も格好良さもまるで無いし、ただ自分の運命を嘆いてウロウロしているだけ。
この作品の最大の魅力はやはり庄野晴彦による美術デザインだとおもう。
伊藤計画がブログで『大正デカダンスとロシアアヴァンギャルド』と表していたけど異世界の未来?大亜細亜共和連邦とヨーロッパ連合の大戦と言う舞台を表現するキリク文字や社会主義国家様式等、細部迄作りまれた世界観や美術は本当に素晴らしいです。
『GOEMON』もそうなのだけど後半に行くに従い登場人物達がただ喋るだけ、平和についてや反戦メッセージを画面に向かって演説するだけになっていくのが退屈に感じるし、映画と言うよりこれは1枚1枚の『絵』を見せたい、そして世界平和と戦争は良くないと言う主張をメッセージとして伝えたいだけ。
例えるなら紀里谷監督が自転車に乗ってきて、どこかの公園で子供達相手に自分の主義主張や思想も語りつつ自分が撮った写真を使った紙芝居をやっている様なモノだと思う。
なので紀里谷監督が選んだ映画の場面写真と美術デザインを纏めたムック・アート本がこの『CASSHERN』の完成形なのだと思うし是非とも欲しかったのだけど発売されなかったのは残念。
(以下妄想)
キャシャーンが来ている外骨格強化服の高性能ボディアーマー、あれは強化服であり拘束具で押さえ付けてないと筋肉が爆裂してしまうと言うスラムキングみたいな設定は素晴らしいし、元々は歩兵用に開発された設定なので量産タイプの兵士達が大挙して空飛んで来るとか、最後の決戦シーンもヨーロッパ連合が再び侵攻して来てヨーロッパ連合側のデザインが違う高性能ボディアーマー着けた兵士達が飛んで来て亜細亜ヨーロッパ入り乱れての大空中戦が始まってその間隙を縫ってキャシャーンがあの要塞に飛んでくとか、そういうシーンが見たかったです。
ブタブタ

ブタブタ