悪魔の毒々クチビル

J=P・ベルモンドの エースの中のエースの悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

3.8
皆でやってもバカな事はバカだ


1936年のベルリン五輪、フランスのボクシングチームのコーチが成り行きでユダヤ人一家の国外逃亡を手伝うお話。

名優ジャン=ポール・ベルモンド主演のアクションコメディ映画です。というのは客観的な視点の紹介であって、ベルモンドが出ている作品を観るのはこれが初めて。

プロットとしてはシリアスな路線も想像出来る内容ですが、当時のナチス政権を批判しつつも決して重苦しくはならずちゃんとコメディ映画として仕上がっています。
一部ドイツ語パートに字幕が付いていなかったので、ちょいちょい「ハハッ、何言ってるかわかんねーや!」な場面はありましたが。

ちょいとがさつだし、試合に間に合わないと文句を垂らしながらもしっかり少年とその家族を助けに行く主人公ジョー。そのキャラならではの言動やアクションがベルモンドの風貌と見事にマッチしていて、存在感が強烈でした。
少年と打ち解けていく流れも良いね。
ヒトラーもしっかり出てきますが、大分間抜けでコミカルに描かれていますね。
因みにヒトラーの姉まで出てきますが、姉弟ともに演じたのはギュンター・マイスナーです。
彼自身、何度かヒトラーを演じた経験があるそうでそれが凄くしっくり来るルックスでした。
同一人物ですよーって教えてくれんばかりの雷による影の演出は面白かったです。
まさかのジョーに惚れてしまう展開も良かった。

あと今作での影のMVPギュンター。
実は戦争中、敵対関係にありながらジョーに命を救われた事で友人となり、ナチス側の人間でありながらジョーや一家を助ける為に裏で根回ししてくれる重要な役割。
まぁ殆どジョーに無理矢理頼まれて車を勝手に使わせたり、挙げ句の果てにはヒトラーの姉と半ば強引に駆け落ちまでさせられて可哀想ですらあるんだけどそれでも協力してくれる優男でした。

冒頭の戦時中の飛行シーンや中盤のカーチェイス、まさかのラストにヒトラーともカーチェイス、ベルモンドによるアクション等々見応えがあるシーンがある一方で吹っ飛んだ入れ歯が「ハイル・ヒトラー!」と叫んだりナチス式敬礼をする鷲時計が出てきたりと中々鮮烈なコメディ描写も印象的でした。
あと道中で出会った子グマと戯れるシーンも忘れられないですね。めっちゃ人懐っこくて可愛かったけど、本物の子グマだもんな。

上手く行きそうで行かない、駄目そうで上手く行く、と言った適度なハラハラ感とともにサクサク進む展開が見易い作品でした。
オチが子グマエンドなのも善きかな。