凛葉楓流

左利きの女の凛葉楓流のレビュー・感想・評価

左利きの女(1977年製作の映画)
4.2
3本くらい映画を観たような感覚。
長いし、いつ終わってもいいような気もするし、体調が悪ければ寝てたと思う。

序盤は分からなかったが、中盤に行くにつれて夫がかなり有害な男性性を見せてくる。「生ゴム靴は力の象徴」らしい。マリアンヌは彼にスニーカーを買う。でも復縁することはない。そこが素晴らしい。実際、マリアンヌの精神が不安定であることは疑いがないし、夫も父として悪くはないように見える。やはり家族の話は悪役と味方には分けられない。
小津安二郎の写真は笑っちゃったけど、直前に見ていたサイレント映画のワンシーンも感動的だった。まだ観てないけど、どの小津作品だろう?

陰影の使い方が上手い。夕暮れの、顔が見えるか見えないか微妙な暗がりや曇天の合間から日差しが差し込む瞬間、冬の晴れ間。なかなか映画では目にしかなかったものが映る。

そしてマリアンヌの周囲はフランス語に囲まれていて、"ロスト・イン・トランスレーション"状態。舞台はフランスなのは疑いようがないけれど、世界のどこなのかが分からない。庭の梅らしき花も、なんか寂れた住宅街も、変に近未来的な空港も、そこは世界のどこでもない場所だった。
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