horahuki

ソー・スウィート、ソー・デッドのhorahukiのレビュー・感想・評価

4.0
不倫パラダイス!!

不倫妻絶対殺すマンな犯人さんが、金持ち連中の不倫妻を片っ端から血祭りに上げていくジャーロ。更には不倫の現場写真を必ず死体の側にばら撒いて行くため、夫からしたら妻の不倫&死亡を一度に知らされるという精神的オーバーキル。しかも夫側もだいたい不倫してるというね。ここは地獄か!

そして浮かび上がるジャケパクリ疑惑!このジャケにピンと来た方もいるかもですが、昨日投稿した『The Bloodstained Shadow』と瓜二つ。製作年はこちらが先ではありつつも、IMDbだと『The Bloodstained Shadow』がこれに近いデザインを使っていて、本作は全く違うポスターデザインになってる。どっちがオリジナルなのか…。ちなみにこんなシーンはどちらの映画にもありません😱良い加減逆さまの人に飽きたので、あと一本同ジャケあればベストムービーに並べたい!

本作はバーヴァ『モデル連続殺人』影響下のジャーロ。不倫妻たちがエステに集まり、「不倫する女は殺されるんだって。次はあんたが危ないんじゃない?」みたいな煽り合いをする場面や実際にその金持ち奥様メンバーたちがターゲットにされひとりずつ消されていく展開にも近いものを感じる。

とにかく不倫だらけの地獄みが最高に面白くて、とある金持ち家の娘が「隣の奥さん美人だけど、遊びまくってるのよ」と軽蔑してるのは良いけれど、その遊び相手があんたのパパっていうね。しかもママも別の男と不倫してて、実は地獄は自分家だったってのがもう笑える🤣

「カメラが対象を写す」シーンが他のジャーロと比べて非常に多く、犯人が物陰から不倫現場を隠し撮りするという病的な視線演出だけでなく、ターゲットにされる資産家たちを警察がカメラで写し検証するという捜査過程にも徹底されており、どちらにしても「ファインダー越しでないと手出しができない彼方側」を意識させている。これは犯人視点ではパーソナルな内面に迫る精神分析となり、警察視点では公権力の機能不全あるいは腐敗を強調する。ファインダーの先にある闇をファインダーのこちら側の闇へと投影させる意図が極めてジャーロ的で好み。

何度も何度も同じように黒衣の殺人鬼が不倫妻を殺すシークエンスを反復するのだけど、その反復そのものが結果の予兆としてクライマックスのとあるキャラの殺害演出に効いてくる。『セブン』に影響を与えたのではないかと思われるほどに一線を引いていたはずの境界(ファインダー)を易々と超え、向こう側だったはずの「闇」がこちら側にそのまま投影されていく様をシークエンスに落とし込んだクライマックスが本当に素晴らしかった。

森に逃げ込んだかと思えば次の場面では海岸で追いかけっこをするという、マジでそういうロケーションなのか遊び心ある跳躍なのかはわからないけれど、唐突なスローモーション等、異次元な演出も見られ、その中でも背後に明るい青空を背負った黒衣の殺人鬼を仰角で捉えるカメラの色彩対比による黒の濃さの強調が綺麗だった。

「生きている時よりも死体の方が綺麗だ」と口にする死体化粧人の男の言葉や、「性的不能は男性の女性に対する憎悪になる」という言葉が犯人の病的な内面をそのまま語り、心理的に性的不能を匂わせるようなキャラたちを散りばめることで撹乱を図るのも手堅くて面白い。ジャーロの中でも評価の低い作品なのだけど、私的にはかなり面白かった。
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