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天皇ごっこ 見沢知廉・たった一人の革命のPinchのレビュー・感想・評価

3.0
最後まで観て飽きなかったものの、全体として何となく空疎で凡俗な印象が付きまとった。まあ、この国全体――特にこの世代だ、俺には分かる――が空疎で凡俗なのだから当然の帰結である。しかしながら、こういう雰囲気で語られることを本人は望むだろうか、と俺は思った。少なくとも俺は望まない。

見沢知廉は、彼の世代の空疎さと凡俗さを切り裂こうと勇敢に闘った。政治活動を通して生きる価値のある重要な感覚を掴み、残念ながらそれゆえに敗北した。そして現在、ますます行き渡る虚無感というデフォルトの上で、若い世代が政治や文学からの隠遁に走るのも無理からぬ話だ。「革命」は遠過ぎ、「破滅」は身近過ぎる。これまで何とか剥がれなかったメッキがボロボロに剥がれ始めた今、事態は徐々に変わりつつあるものの…。

俺は『天皇ごっこ』が好きである。だからこそ、鈴木邦男の言ったことが一番納得できる気がした。もちろんそれだけで片付けられる単純な問題ではないのだが、彼だからこそ言えた正論だと思う。
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