近本光司

魔女の近本光司のレビュー・感想・評価

魔女(1922年製作の映画)
4.0
シネマテーク・フランセーズのホラー映画史特集にて、Dagerlöff & Galner というエレクトロデュオの生演奏付き上映。とにかく音楽がすばらしく、これほどあざやかに百年前の映画に息を吹きこむことができるのかと驚いた。2016年のスウェーデン・フィルム・インスティチュートによるうつくしく甦った修復版にて。
 悪魔や魔女が信じられていた中世と較べて、いまの時代はなにが異なるというのか、わたしたちの裡にも理不尽な信仰は生きているではないかという問いかけは現代の観客にもまっすぐに迫ってくる。近代医療におけるヒステリーとの比較分析や、ところどころに滲むユーモアのセンスはまったくもって現代的で、まるで百年前の映画を観ているという感じがしなかった。とはいえ(物)語りの形式はひじょうに独特で、まだ映画の文法がさだまっていなかった黎明期の映画のもつ可能性の豊穣さをかんじる。映画とはかくもあり得たのだ。