けー

マッド・ファット・ワイフのけーのネタバレレビュー・内容・結末

マッド・ファット・ワイフ(2007年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

意外に可愛らしいラブストーリー。

「ドリームガールズ」の感想を書くときに検索していくつか読んだ記事や記事の見出しでやたらと目にしまくっていたこのタイトル。

この映画のせいで助演男優賞が吹っ飛んだとかどうとかっていう記事がそれこそ星の数ほどヒットしたので一体どんな映画だったんだと気になっていたんですが、ようやく見ることができました。

そもそも他の映画での演技が他の映画での演技の評価を左右するなんて、そんなことあるんですかい???みたいな。

まぁそれはさておき、あまりにもそのことでエディ・マーフィがガックリきた的話が蔓延していたので、ちょっとドキドキしながら視聴したんですが、別にこれ普通にすごくいい話じゃないですか。

赤ん坊の時に親から施設の前に捨てられていたノービット。

中華料理店と施設のオーナーであるチャイニーズ系のウォンを親代わりとし、大勢の子供たちと一緒に育つ。

施設の中で特に仲良くなったのがケイトという女の子。2人は大きな木の下で結婚の真似事までするが、その2週間後、ケイトは養子に貰われていき、ノービットは再び1人ぼっちとなる。 

内気なノービットは学校でもいじめの対象となるが、ある時、ラスプーシャという女の子に救い出され、その時から2人は一緒に行動するようになりやがて結婚する。

そして時は流れ、久しぶりに街に戻ってきたケイトとノービットは再会する。ケイトはウォンが施設を引退するつもりときき、自分が引き継ぐつもりとノービットに打ち明ける。


ノービットの孤独というのがとても繊細に描かれてあって、しかも、家族ができたと喜んでいたはずが、気がつけば「都合のいい存在」として奴隷な扱いを受けているというポジションに置かれているのがもうなんというか、そういうことって確かにありそうだなと思わさせられたというか。

しかも結婚してしまっているのでなかなか助けを求めることもできないし、下手したら当人が自分がとんでもなく不当な仕打ちを受けているということに気がつけないという。

それは”自分の居場所”、”安心できる場所”がずっと欲しかったからという孤児ならではの心理が強く働いていて、それがすごくリアルに描かれている気がして。  


エディ・マーフィが3歳の時に両親は離婚。

8歳の時に彼女に殺されてしまっていて、父親の記憶というのがほとんどないそうだ。

心労からお母さんが病気で倒れてしまい、エディ・マーフィとお兄さんのチャーリーは一年間施設で過ごすことになったそうだ。

この映画はそのお兄さのチャーリー・マーフィとエディ・マーフィが書いているので、当時10歳だったお兄さんのチャーリーの方の気持ちがもしかしたら強く反映していたのかもしれないかな。

きっと弟のことを守らないとって気が張っていただろうし、エディ・マーフィはまだお兄さんがいたから安心できただろうし。

チャーリー・マーフィは2009年の時に癌であることを宣言されている。
ポー兄と同じく家族最優先主義のエディ・マーフィが仕事数を減らしていったのは無理のない感じ。


この映画でエディ・マーフィは3役を演じこなしている。

ノービットとラスプーシャとウォン。

ノービットとラスプーシャはすぐエディ・マーフィがやっているとわかるけれども、それでもラスプーシャの声の変え方はすごかった。

声だけ聴いているとエディ・マーフィがやっているとは全然思えないし、よくもまぁこのトーンの声が出せてしかもあのスピードでトークできたものだなと。喉とか痛めたりしないのかと普通に心配になりましたが😅

で、一番エディ・マーフィだと気が付けなかったのがウォン。

ギャグのやり方やあまりにも際どいヒヤリとするようなギャグに、これもしかしてエディ・マーフィなのかなってちらっと思いはしたけれども。

いやいや今こう書きながらも信じられない。


主人公と悪役と主人公の味方役をやっているわけで、撮影はもう尋常でなく大変だんだろうなぁというのは容易に予測のつくところ。

下ネタも相当多いけれどももっと強烈にやらかしているおバカ映画なんていくらでもあるし格別ひどいってわけでは全然ない。

お兄さんのチャーリー・マーフィは2017年に他界されていて、もしかしてここのところの続編づくりは「会いたい人たちに会えるうちにあっておきたい」っていう気持ちの表れなんじゃないかとかって勘繰ってしまう。続編を作る時にオリジナルキャストを可能な限り呼び戻すというのも、結構なかなかできることじゃないというか、エディ・マーフィの人柄と温かみを感じてしまうのだけれども。

あと、マーロン・ウェイアンズも出ているのだけれども、多数のキャラクターを演じ分けているエディ・マーフィに「多数のキャラクターを演じるのって楽しそうですね」と言ったら、真顔で「仕事だからやっているんだ」と言い返されてしまったらしいのだけれども数年後、「Sextuplets」で六つ子を演じることになったとき、撮影現場で甥っ子に「楽しそう」と言われ、エディ・マーフィとまったく同じリアクションをしていた自分がいたとインタビューで笑って話していたのがめちゃくちゃ面白かったです。
けー

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