幽斎

THE LAST BROADCAST ジャージー・デビル・プロジェクトの幽斎のレビュー・感想・評価

4.8
本作は全てのPOV映画の元祖とされる「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」よりも1年前の1998年に発表された作品。しかも、恐らく史上初のネット配信(オンデマンド)と言う2つの輝かしい経歴を持つが、日本ではVHSのみでDVDはUS盤のみ。故に気軽にお薦め出来ないが、とても優れたフェイク・ドキュメンタリーで有る事に間違いない。

物語はジャージー・デビルと言うUMAの都市伝説を追うCATVの番組クルーが、謎の殺人と失踪事件に遭遇するが、唯一の生き残りのスタッフが不当に逮捕され独房で変死体と為って事件は幕を閉じる。これを疑問に思ったドキュメンタリー作家である主人公が、彼が残したフィルムを基に再捜査を開始する。そんな中である日、主人公の元に損壊寸前のテープが送られてくる。其処には事件のカギを握る犯人が映っているとの事だが・・・。

このあらすじと、森の中へカメラ片手に録画しながら進んで行く。と言う時点で明らかにブレアはパクッてると断言できる。実際当時のニューヨーク・ポストが盗作ではないかと騒動の発端を作ったぐらいだ。元々ブレアはPOV以外では特に特徴も無く、あれだけヒットした要因は当時のネットを駆使して物語の基に成る魔女伝説を丁寧に作り上げ、まるで疑似体験できる様にしたプロモーションが秀逸だったに過ぎないので、エポックメイキングでは有るが本作を見ればとても尊敬は出来ない。

物語はブレアの様にオカルトに頼らず、ドキュメンタリー調に徹している。中弛みは否めないが、後半で驚愕の展開を迎える。これがあるからこそ、本作はブレアを超える元ネタであるとキッパリ言える。これまで数多のスリラー映画を見てきたが、これは間違いなく歴代ベスト級のオチと言える。ラストの余韻も含め、ここまで独創的で陥穽に富んだトリックは、20年経った今でも鮮明に思い描ける程だ。

本作の原題は「THE LAST BROADCAST」ご覧頂ければこの意味も分かると思う。今ではPOVよりも「アンフレンデッド」の様なSNSを使ったスリラーが主流となりつつ有りますが、もしご覧頂ける機会が有れば是非お薦めしたい作品です。
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