青山祐介

火刑台上のジャンヌ・ダルクの青山祐介のレビュー・感想・評価

4.0
『異端、魔女、裏切者、神の敵、王の敵、民衆の敵、地獄の娼婦、黒魔術の虜、悪魔の手先、連れて行け!死を!殺せ!火あぶりに!…ジャンヌ!神の娘よ!進め!行け!』

○ロベルト・ロッセリーニ「火刑台上のジャンヌ・ダルク(Jeanne au bûcher)」1954年
イタリア/フランス、映画オラトリオ、脚色:ロベルト・ロッセリーニ、合唱:パリ、オペラ座合唱団、合唱指揮:ルネ・デュクロ
ジャンヌ・ダルク:イングリッド・バーグマン
○アルテュール・オネゲル「火刑台上のジャンヌ・ダルク~全11場の劇的オラトリオまたは神秘歌劇~(Jeanne d’Arcau bûche, Oratorio dramatique - poéme de Paul Claudel) 2012年
管弦楽:スペイン国立カタルーニャ州バルセロナ交響楽団、合唱:リーダー・カマラ合唱団、マドリガル合唱団、カタルーニャ・ヴィヴァルディ少年少女合唱団、指揮:マルク・スーストロ、上演:バルセロナ音楽堂(アウディトリ)パウ・カザルス大ホール2012年11月17日
ジャンヌ・ダルク:マリオン・コティヤール

「火刑台上のジャンヌ・ダルク」は、1935年、ポール・クローデルの劇詩にアルテュール・
オネゲルが作曲した、演劇と音楽との新しい形式の歌劇である。主役の二人は、歌うことは
なく台詞を読み上げるだけである。男性合唱団、女性合唱団、少年少女合唱団が背景を歌い、
場面がめまぐるしく変わる。役者の腕の見せ所である。1938年演奏会の形式で初めて上演
され、舞台作品としての初演は1942年スイスのチューリッヒ、パリでの初演は1950年に
なってからである。
ロッセリーニは、1953年から各地で舞台を上演しているが、パリでの舞台をもとにして、
演劇とは違った映像を創るべく、彼なりの演出と脚色をほどこして制作したのがこの映画で
ある。しかしこれは、大女優であり、彼にとってのジャンヌであり、彼のもとにすべてを
なげうってきたイングリット・バーグマンという稀有の存在がなかったならば、恐らく実現
することのできなかったものであろう。それだけに、ともするとわれわれはジャンヌよりも
バーグマンの美しさ、バーグマンの女性としての聖性だけを見てしまい、クローデルの劇詩
とオネゲルの音楽を忘れてしまいそうになるのである。
そこで、巡りあったのが2012年のバルセロナ音楽堂の演奏会である。舞台下手に主役二人
と他の二名の俳優が平服で立ち朗詠する、中段にバルセロナ交響楽団、オンド・マルトノ、
後段にリーダー・カマラ合唱団、マドリアル合唱団、ヴィヴァルディ少年少女合唱団、右手
中段に聖母マリア、聖マルグリット、聖カトリーヌ役の歌手が場面に応じて現れて歌う。
その、見事な演奏、素晴らしい歌唱。そして、ジャンヌ役のマリオン・コティヤールの演技
をこえた圧倒的な語り、時には涙を浮かべ、神に祈り、驚愕し、恐れ、トリマゾを口ずさむ。
イングリット・バーグマンはジャンヌを演じ、
マリオン・コティヤールはジャンヌを語る。

『聖女ジャンヌよ!神の娘よ!清く!正しく!活発で!熱く!雄弁で!ひたむきで!不屈
にして!まばゆい!…神がいる、何よりも強い神がいる、ジャンヌよ、神の娘よ、おいで!』
青山祐介

青山祐介